2023年度の上場印刷企業35社のうち、女性管理職比率を開示している26社の平均は8.8%。厚生労働省「雇用均等基本調査」によれば、女性管理職比率は12.7%と横ばいで、製造業は8.5%と低い水準となっている。(数字で読み解く印刷産業2024その8)
上場印刷企業の2023年度業績は堅調
JAGAT『印刷白書』では、社名もしくは特色などに「印刷」とある企業を、上場印刷企業としています。各社の業績は決算短信と有価証券報告書で見ていますが、提出時期の関係で2023年6月期決算から2024年5月期決算までを2023年度としています。
上場印刷企業の社数は、親会社による完全子会社化による上場廃止がある一方、新規上場もあって、33~34社で推移してきました。『印刷白書2024』では、2022年3月3日上場のイメージ・マジックと、2023年9月22日上場の笹徳印刷の2社を加えた35社の企業力などを見ています。
上場印刷企業の2023年度業績を見ると、35社の売上高合計は4兆円(前期比2.4%増)で、増収22社、増益20社、黒字転換2社と堅調です。
上場印刷企業26社の管理職に占める女性の割合は8.8%
2023年3月期決算以降の有価証券報告書から、人的資本の情報開示が義務化され、管理職に占める女性労働者の割合(女性管理職比率)が開示項目の選択肢の一つとなりました。上場印刷企業35社のうち、女性管理職比率を開示している26社の平均は8.8%(前期は16社7.0%)です。
女性管理職比率27.1%と突出しているラスクルは、2024年7月末は24.7%となりましたが、役員に占める女性の割合は37.5%から44.4%に上昇しました。一定グレード(等級)以上の女性従業員の割合を2025年7月末までに20%以上にすることを目指しています(2024年7月末時点18.2%)。
次いで22.2%のクレステックは、中途採用者や女性が活躍できる社内環境の整備に取り組んでいて、2024年6月末時点の女性管理職比率は24.0%となっています。
19.7%の総合商研は、2024年7月末で20.6%となり、係長職以上の女性社員の割合を25.9%(2024年度実績)から、2027年7月末までに30%以上とする目標を掲げています。
厚生労働省「令和5年度雇用均等基本調査」によれば、女性管理職比率は12.7%で、前年と変わらず横ばいとなりました。産業別にみると、「医療、福祉」52.7%が突出して高く、「教育、学習支援業」24.8%、「生活関連サービス業、娯楽業」20.1%、「宿泊業、飲食サービス業」19.4%と続いています。「製造業」は8.5%で、「電気・ガス・熱供給・水道業」4.4%に次いで低い水準となっています。
また、労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2024」によると、アメリカ41.0%、シンガポール40.3%、フランス39.9%、ドイツ28.9%など、諸外国がおおむね30%以上となっているのに対して、日本は大幅に低くなっています。
『印刷白書2024』は2024年10月31日に発刊となりました。上場印刷企業35社の分析では、事業展開の特色と売上高構成比、個別業績による規模・収益性・生産性・安全性・成長性、連結業績による設備投資総額・研究開発費、キャッシュフローバランスなどを比較しています。
限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。
(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)