マスター郡司のキーワード解説:推し活

掲載日:2024年11月18日

推し活向けの小ロットのグッズ

「推し活」とは、アイドルやキャラクターなどの「推し」、いわゆるご贔屓を愛でたり応援したりする活動のことである。推し活のやり方は人それぞれだが、推し活を「オタ(ヲタ)活」の一環として認知する傾向もあり、推し活をしている人は何かしらのオタクであることは自他ともに認知されている。今回はそんな推し活について語ってみたい。

毒にも薬にもならない意味合いを含んでスタートしてしまったが、この推し活グッズが印刷業界にとっては「そこそこの売り上げになる」ことも事実である。もともと印刷業界が小ロット印刷ビジネスを模索していたときに、コミケ(コミックマーケット)などでのパーソナル出版物や缶バッジ、アクリルグッズ、ファイルグッズといった少ロットのオタクグッズにニーズを見いだし、“創注”していったのである。

ビジネスとしての推し活

推し活の悪例としては、韓国のBTS(防弾少年団)が挙げられるだろう。アメリカのビルボードチャートの順位を上げるために、芸能事務所(ジャニーズ事務所のような韓国のHYBE?)とファンクラブ(ARMYと呼ばれている)が結託して(芸能事務所が操っている感じかな?)チャートを押し上げる作業をしたのだ。芸能事務所は専用のパソコンを何十台(百台以上か?)も常備して24hrs.休むことなくBTSの楽曲をかけまくってポイントを稼いだりしていた。少々やり過ぎたのでアメリカの世論やビルボードに目を付けられ、現在のようになってしまった。

しかし、結果はどうあれ(?)、国連に呼ばれてスピーチするまで登り詰めたことは事実であり、全世界相手なのでエンターテインメントビジネスでは大成功以外の何ものでもない(日本なら国内市場もあるので、ここまで大げさには?)。国連で行った彼らのスピーチには賛否両論だが、ワタシテキには堂々としたというのが不遜に感じられて、好きにはなれない。

BTSの場合はやり過ぎ感が強過ぎるが、推し活の力をビジネスに変えれば、それなりに商売できるということでもある。K-POPアイドルだって、長く続けるには日本市場を狙うのが一番手っ取り早い。先ほどのBTSも日本ではそこそこのビジネスになっているし、女性グループには根強いファン層が末永く応援してくれている(アメリカの入国審査で変な勘違いをされることもない)。日本は嫌韓感情(逆の方が大きい!)があっても、エンタメを受け入れてくれるお国柄なのである。

制作のノウハウも必要

印刷会社が芸能事務所を直接運営するわけにはいかないが、連携することは可能だ。もちろんブロマイドやフォトブック、ファイル、Tシャツ、布製(合成皮革やビニール製も)バッグ、アクリルキーホルダー、缶バッジ、定期入れ等々、印刷会社が提供できるアイテムやグッズは山ほどある。このように、印刷会社が扱う(扱える)推し活グッズは平面から2.5Dまで幅広く存在する。しかし、3Dプリンターとなると、敷居が急に高くなってしまう。

3Dプリンターが流行したころ、製版会社などでは画像技術をPRポイントにして3Dビジネスを売り込んでいた会社も少なくなかった。恐竜の3Dフィギュアなどの表皮の生々しさなどは、製版会社がPhotoshopで仕上げた品質が群を抜いて優れていた。3Dビジネスは3Dデータハンドリングのみではなく、テクスチャーといって表面の色や質感再現も重要になる。最初のうちはこれで結構商売になっていたのだが、そのうち「こういう図柄でこういう画像と合成してくれないか? また、データ形式はこうしてくれ」などの3Dデータハンドリングに関する要求も強くなり、3Dビジネスをやめてしまった印刷関連会社も多かった。いまだに続けている印刷会社は大手か、人材がいる会社のみという感じである。

それに比べれば、2.5Dグッズは印刷会社でも手を出しやすいといえるが、ノウハウも必要だ。大手芸能事務所やアニメ制作会社、大手の出版社なら、推し活グッズの注文を「これお願い」という感じで、データで注文すると思うが、コミケや地域特有のキャラだと、印刷会社自身で手直しする必要も出てくる。アクリルグッズなどはカッコウイイも大事だが、よりカワイくデザインし直すことも必要なのだ。要するに、八頭身のキャラをわざと三頭身にして可愛くするということである。昔は、西洋人や中国人には三頭身の漫画が描けなかったのだが、最近はできるようになってきたようだ。印刷会社もこの辺のセンスを持っていないと、推し活グッズのビジネスは難しいといえる。

(専務理事 郡司 秀明)