【マスター郡司のキーワード解説2018】ブロックチェーン(その1)

掲載日:2018年7月26日

メディアビジネスに関わる印刷会社がおさえておきたいキーワードを解説する。
今回は「ブロックチェーン」を取り上げる。

JAGAT 専務理事 郡司 秀明

ブロックチェーン 1

財務省の文書改ざん事件では、政府や国会が対策に大わらわだ。しかしIT業界には、ほくそ笑んでいる人が多い。「電子何々といわれるメディアは、信用できるものではない。やっぱり信用できるのは紙の文書だ」という人が印刷業界には多いが、今回の改ざん事件を例に挙げて、IT業者が「紙は改ざんがたやすい。信用できるのは改変履歴が公開されるデジタル文書だけだ!」と急に意気盛んになっているのだ。

この根底にある概念がブロックチェーンであり、これまた世間を騒がせている仮想通貨ビットコインの基本技術になっているものである。ビットコインの基本的な仕組みはSatoshi Nakamotoという日本人が作ったことで有名だが、その実態は謎に包まれており「本名なのか?」「本当に個人なのか」も不明である。

金融業界の最新トレンドで、金融ビジネスを一変させるともいわれているFinTechは、先進の金融サービスを目指す取り組みだ。FinTechの一つとして、オープンな金融サービスを実現する仕組みとして俄然注目されているのが「ブロックチェーン」であり、ビットコインを支える技術として一躍脚光を浴び、アイデアの斬新さと幅広い用途への応用が可能なことから、ブロックチェーンのもたらすビジネス改革に多くの企業が注目している。巨額の投資を呼び込み、金融サービスにとどまらず、実証実験等の動きも活発化している。2回に分けて、ブロックチェーンについて説明したい。今回は、その一歩としてサワリだけを説明したい。

ブロック(チェーン)を一言で表すと、台帳ということができる。しかし、ただの台帳ではない。例えばビットコインの場合には、2009年1月3日に誕生してからすべての取引が載っている台帳だ。ブロックが台帳の1ページ分で、それをチェーンでつなげた台帳というのが概念である。

昔は情報を整理し、種々選択した情報だけを持ち歩くのが仕事のできるエリートビジネスマンだった。それが携帯端末の電子書籍になり、大量のブックデータを持ち運べるようになって状況が大きく変わった。パソコン(タブレットやスマホもこの範疇)で会社のサーバーにつなげれば、会社にいるときでも、喫茶店でも同様のことができるのだ。現代の有能なビジネスマンは、整理能力よりも検索能力に長けているといえる。

音楽で考えてみよう。例えば昔のウォークマンだと、今日のお気に入りのカセットを3~5本選択して持って出かけたものだったが、iPodになって自分の持っている全レコード&CDを24時間持ち運べるようになってしまった。その上、ユビキタス時代が訪れ、音楽でも本でも資料でも所有せずに全世界のコンテンツを好きな時に、好きな場所で、好きなだけハンドリングできるようになってしまった。

情報やコンテンツ整理が話題になったが、今は逆にメールもズルズル増やすのみの人が多いのではないか?と思う。Gmailなら15GBまでなら無料なので、不要メールでも一回も削除したことがない人がいると思う。私の場合は今までに二回15GBのリミットに達してしまい、容量を増やす(有料)のではなく、そこでバッサリ元データを断捨離してしまった。ぶっちゃけた話、100GB分有料でサーバーを使っても一カ月当たり250円程度である。年換算でも割引があるので2500円程度なのだ。

前述したようにブロックチェーンは仮想通貨ビットコインの基幹技術として発明された概念である。そのため、ブロックチェーンをビットコインと同じものとして認識されることもあるのだが、「ブロックチェーン」はあくまで「分散台帳を実現する技術」であり、その技術をビットコインが用いているにすぎない。

ブロックチェーンに保存されているそれぞれの取引データは暗号化され、それぞれがインターネットなどオープンなネットワーク上で結び付くことで、高い信頼性が求められる金融取引や重要データのやりとりなどを可能にするというものである。ブロックチェーンに基づいた「分散型台帳技術」は、分散することで透明性と安全性が守られるといわれている。

(会報誌『JAGAT info』 2018年5月号より抜粋)