印刷会社経営にとって、コロナ禍による反動増などが消失した2024年は、結果的にアフターコロナを占う試金石の年になった。50人超の印刷経営者の声など、年末時点で見えている材料をもとに2024年を振り返り、2025年を展望する。
■2024年:売上高:コロナ禍の反動増局面が終わって息切れ
24年は10月までで売上高が増加したのが4ヵ月あり、3%以上落ち込んだのは3ヵ月だった。23年までにコロナ禍で止まっていた需要の放出を終えたため、アフターコロナの真の幕開けの年になった。年間売上高は0.6%減と4年ぶりの減少になる可能性が高い。地域別には、名古屋圏が全国で最も良かった。大阪圏は5月から万博効果で6ヵ月連続増加と好調だった。首都圏は年間を通して低調だった。価格修正で受注量の減少を補う経営構造に変わり、名目的な売上高は伸びたが受注は伸び悩んだ。印刷会社の倒産も全国的に多かった。
■2024年:製品別:商業の変容、出版の低迷、総合の堅調、事務と包装の失速
商業印刷は低調に始まり夏以降に徐々に回復したが、年間の差し引きは微減と見られる。たとえばチラシはかなり減っているが、配布まで包括的に受けるBPO型やデジタル印刷によるカスタマイズ型は増えているので商業印刷のありようそのものが変わっている。都市部に多い出版印刷は±0前後だが、堅調と言うより持ち直しが遅れている印象だ。地方都市に多い総合印刷は最も順調で、ソリューションビジネスでは複合的な業態がプラスに働く。事務用印刷はコロナ政策特需が剥落し、包装印刷は夏以降に回復したが年間ではこの数年では最も芳しくなかったようだ。
■2024年:景況感:春を底にして持ち直し、価格は再上昇、投資は様子見
JAGAT調べの印刷経営者による四半期景況DIを見ると、景況感は24年春が最悪期で、年末にかけて改善する足取りだった。個別には、資材料単価は上昇幅が縮小していたが、24年4-6月を機に再び上昇に転じた。印刷単価は資材料単価にやや遅れながらも再び上昇していった。全体景況は24年9-11月に5四半期ぶりのプラスを回復し、印刷業界景況は24年3-5月を底に2四半期連続でマイナス幅を縮めるなど、経営者心理は春を底にして年末にかけて改善していった。設備投資は21年以降、ごく小幅なプラス圏でほとんど変化なく見送るスタンスが続いている。
■2024-2025年:印刷経営者の見方
JAGAT会員55社の25年見通しのコンセンサスは、売上高の伸び率は24年並みのプラス。ただし企業ごとには、上位予測は昨年より高く、下位予測は昨年より低く、各社の予想の変動幅が拡大して業績格差拡大局面のようにも受け取れる。一方、営業利益は昨年よりやや低めだが「24年並み」に収束、ただ物価高騰が重しになるとのスタンスが目立つ。24年の振り返りと25年の抱負に関する自由記述をAIテキストマイニングすると上図のとおり。「資材料」の「価格転嫁」と「価格」の「値上げ」を「進める」、「売上高」「人材」「利益」「顧客」の「確保」を焦点にする様子が浮かび上がる。調査協力社には12/27に詳細レポート11枚を送付した。
■2025年:印刷経営のスタンス
25年は印刷需要を誘発するようなイベントがやや少ない。24年にテーマにした「新規事業」の推進フェーズに入っていて、25年の55社の施策と抱負を見ると、これを運営する「人材育成」がテーマになる。人材は広く採用して印刷にこだわることなく必要事業に配置していくイメージだ。生産は設備投資で機械を取得するというより、自動化・省力化・無人化・DXがテーマだ。24年が真の意味で印刷ビジネスの転換点と「感じた」とする指摘が多く、25年は新たな展開の幕開けの年になりそう。さらに定性・定量の両面から分析を進め、2/7開幕のpage2025カンファレンスで具体的な印刷ビジネスの展望を明らかにする。
藤井建人(JAGAT)
<関連セミナー・展示会>
2025年2月7日(金) page2025オンラインカンファレンス
2025年の印刷ビジネス展望 ~BtoBにおける価値共創の視点から
2025年2月7日(月)~14日(金) page2024オンラインセッション(計12本)
カンファレンス+セミナー
2025年2月19日(水)~21日(金) 3日間のリアル展示会
page2025展示会
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印刷白書2024
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