マスター郡司のキーワード解説:界隈

掲載日:2024年12月27日

若者言葉としての「界隈」

2024年も年末となり、今年の流行語大賞が話題になっている。単なる流行語大賞では、2024年は何といっても大谷翔平選手に尽きてしまう。「50-50(フィフティ・フィフティ)」辺りが今年の流行語大賞に選出されるというのが順当だろう。

さて、注目されるキーワードでは、昨年であったらAIで間違いなかった(2022年からAIは話題になっていたが、一般人にまで広く認識されたのは2023年かな?と思う)。しかし、2024年に注目された新技術やマーケティングに関する新用語はどうも見当たらない。

そこで今回は、ごくごく狭いエリア(?)で使用されているニッチワードを取り上げてみたい。実は先日、孫娘(小学生)と姪っ子(働いている)との3人で渋谷に行ったのだが、私にとってはいろいろと勉強になった。というのも、連れていかれた衣料品店では、市場(マーケット)というジャンルではなく、「界隈」というジャンルで分類され、販売されていたのだ。今の若者は、どうもこの「界隈」という言葉を“誤訳”して使用しているらしい(?)が、私は聞いたことがなかったのでとても勉強になった。そして、姪っ子だけが知っているのなら「ふーん、そんなものか?!」で終わってしまうのだが、小学生の孫娘も「界隈」という言葉を知っていたので、「こりゃ真剣に勉強しなくては」と思った次第なのである。

ちなみにそのショップでは、商品が「JC界隈」「JK界隈」と分類されていた。もちろんJCは女子中学生、JKは女子高校生のことだ。

調べてみると、「界隈」は新マーケティング(理論)ともいわれているようだが、そんなに大それたモノではなく、単なる若者言葉として使用されているだけだと思う。しかし、渋谷のファッションビルに入っている若者向け「界隈」ショップでは「界隈」的分類がなされていて、ハウスマヌカン(これは既に死語かな?)と顧客との間では「何々界隈では、これがはやっているんですよ」などという会話が普通に行われているようである。こういった世界をビジネスにも応用できるというのが、マーケティング的には非常に重要なことなのである。

偏差値だけではない価値観

さて、年末に入ってJAGAT、なかでも私は今年の印刷業界についてまとめる立場でもあることから、「今年は何だろう?」と真剣に考えているところだ。そのような時期なので、JAGAT会員とも印刷業界の景気などについて連絡を取る機会も多くなってきている。そして、“地方の雄”的な印刷会社の中には、街の電博(広告代理店)的な意味合いを強めている会社が目立ち始めている。

昔の印刷会社は、確かに街(町)の広告代理店的な役割も担っていた。正直、街の電博としてうまくいっているかどうかには「?」のところもあるのだが、成功している印刷会社もある。JAGATでは以前から「広告代理店的な要素を印刷会社は持つべきだ」と訴えてきたが、デジタル印刷機を本格的に生かそうとする場合には、“大なり・大なり”マーケティング的な販促活動のお手伝いが印刷会社にもできることが望まれている。

そういった活動をするためには、とにかく何にでも詳しい人間が必要だ。どんなことにも興味を持ち、実際に参加できるポジティブな人間が必須なのだ。印刷業界にはさまざまな経歴の人が集まっている(これはラッキーと捉えるべきだ)。一部上場会社を目指して勉強し、実際にそこで働いているエリートたちが「型にはまった人間がほとんど」なのとは好対照である。

いわゆるエリートは、学生時代に偏差値だけを目標に勉強して、中学・高校・大学とその名前というかレベル、つまり偏差値が0.1でも高い学校を目指す価値観だけで生きてきた。しかし、そんなことにこだわってきたのとは根本的に異なる人生を歩んできた「少々ヤンチャな人間」も社員に混ざっているというのは、印刷会社は秘めている可能性がより大きいのだといえる。

実は、この原稿は日曜日に書いているのだが、その日の朝に見ていたビジネス番組(といえるかどうかは「?」だが)が「マツキヨココカラ」特集であった。登場人物には個性的な人が多く、マツキヨココカラの良い意味での独自性を強く感じてしまった。こういった人たちが社内にいれば、「界隈」的マーケットにも素早く対処できるハズだ。

真面目に仕事をこなしていくだけなら偏差値的価値観も大事だが、さまざまなマーケティング的アクションを起こしていくのには「?」が付く。優等生だけでの対処は難しくなっている。むしろ反偏差値人間の持つ幅広い「知識」や「経験」、「独創性」に可能性を強く感じる。

(専務理事 郡司 秀明)