生活者を中心とした力学
投資市場における資金調達面での作用は直接的で、大きな促進力となっている。サステナビリティの追求では、供給側である企業の生産活動の変革だけでなく、需要側である生活者の消費活動の変容も大きく影響を与えている。電通総研とグローバルビジネスセンターが世界各国の一般生活者に対して2010 年より実施している「サステナブル・ライフスタイル意識調査レポート2023」によると、「サステナビリティを推進していく責任を担うべき主体はどこか」に対する回答として、「国・政府」と答えた人の割合が各国とも50%以上となっている。一方で、企業への期待について取り組みが先行しているフランス・ドイツでは、グローバル企業への期待がそれぞれ53.0%・61.0%と比較的高い。隣国と地続きのEU では、グローバル企業の活動への期待が大きいのもうなずける。
これらの生活者の動向に影響を与える要因としては、国際機関や国家、あるいはNPO の活動による教育啓蒙活動、民間メディアによる情報提示などが挙げられる。また、サステナビリティに関する認識をどのように消費行動に結び付けるかという点においては、イギリスをはじめヨーロッパ各国では民間機関による商品・サービスの評価サイトが存在しており、生活者の購買意思の決定に一役買っている。
日本のあるNPO 法人では、生活者の視点から企業活動のサステナビリティ評価を実施し、その結果を「企業通信簿」として公表している。中立的な立場から情報提供を行うことによって消費行動の変容を促し、さらには企業活動の変化という作用をもたらそうと試みている事例である。
(JAGAT 丹羽 朋子)