【マスター郡司のキーワード解説2018】ビジネスモデルキャンバス(基礎編)

掲載日:2018年9月27日

メディアビジネスに関わる印刷会社がおさえておきたいキーワードを解説する。
今回は「ビジネスモデルキャンバス」の基礎編。

JAGAT 専務理事 郡司 秀明

ビジネスモデルキャンバス(基礎編)

Dscoopソウル(HPとは独立組織で運営されているユーザー会)では、トピックキーワードに多く遭遇した。製品に関したこともあるが、今回のソウル大会ではミニMBAを行ったので、マーケティング関連のキーワードにも多く接することができた。そこで今回と次回は、このミニMBAで話題になったキーワードについてご紹介したい。

私が参加したのはDscoopソウル最終日(2018年5月16日)に開催された日本語セッションである。講師は朴貞子先生で、先生は朝鮮系中国人で北海道大学に留学後、大阪市立大学の博士課程に進んでいる。

先生の話は、自分の(日系企業ならではの)苦労話を中心に、香港や東南アジアでの経験の話だけでも、十分MBAの講義で通用する話なのだが、今回はミニMBAで紹介していたBMC(ビジネスモデルキャンバス)を紹介したい。今回は基礎編、次回を実例に当てはめた応用編にしたい。

「ビジネスモデルキャンバス」の説明に入る。まずビジネスモデルとは何か? について考えてみる。ビジネスモデルとは、「儲ける仕組み」のことである。このビジネスモデルを分析するツールとして、「ビジネスモデルキャンバス」が存在している。

「ビジネスモデルキャンバス」は、Alexander Osterwalder氏によって提案されたもので、日本では、2012年に『ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書』(アレックス・オスターワルダー、 イヴ・ピニュール著:翔泳社)という本で紹介された。具体的には9つの欄に分かれた一枚の紙である。この紙にポストイットをペタペタ貼るという使い方をする。現状のビジネスモデルを整理したり、改善点を考えたり、新しいビジネスモデルを構築するには大変便利な仕組み(フレームワーク)となっている。

それでは「ビジネスモデルキャンバス」という一枚の紙をご紹介しよう。下の図がこれに当たるが、これはミニMBAで朴先生が紹介した資料である。

特徴は、ビジネスモデルの重要な要素が一枚の紙にまとめられており、ビジネスの全体像を俯瞰しやすく、各項目の整合性が確認しやすいことから、現状確認や認識の共有化にとても使いやすい。また一枚の紙にポストイットにポイントを書いて貼っていく方法なので、ポストイットを貼り直すことで、簡単に組み替えができ、新規事業の構想などにも使いやすい。ビジネスの現状確認や新規事業構想など、ビジネスモデルを考える場面で広く使われている。ポストイットと模造紙でなくともタブレット等が全盛になれば、ポストイットと同様なことは可能であるということは言うまでもない。

もう一度、「ビジネスモデルキャンバス」のメリットをまとめると

●全体を俯瞰できる ●各項目の関連性が確認できる ●組み替えすることで構想の検証ができる

等が挙げられる。

「ビジネスモデルキャンバス」の構造は、図に示された9つの欄に分かれている。中央が価値提案であり、ビジネスモデルの中核が価値提案であることを表している。価値提案を中心に、右側がマーケティング要素、左側は、価値提案を実現するための組織体制やマネジメントなどのバックエンドの仕組みだ。下側が収益とコスト構造である。全体で、ビジネスモデルの全体像を表している。

「ビジネスモデルキャンバス」は以下の順番で考えると理解しやすいと思う。

1. 顧客 

Customer Segments

2. 価値提案 

Value Proposition

3. チャネル 

Channels

4. 顧客との関係

Customer Relationships

5. 収益の流れ 

Revenue Streams

6. キーリソース

Key Resources

7. 主要活動 

Key Activities

8. キーパートナー 

Key Partners

9. コスト構造 

Cost Structure

次回はこの9つの欄について、実例を挙げて具体的に説明したいと思う。

(会報誌『JAGAT info』 2018年7月号より抜粋)