『営業の見える化』からはじめる高収益への道 第二回

掲載日:2014年12月19日

印刷需要の減少に顧客接点となる営業はどう立ち向かうべきか。連載第二回目 営業パーソンの「思考の見える化」について。

…眠れる需要はそこにある…
「印刷営業の見える化」シリーズ 第2回 営業パーソンの「思考の見える化」

まずは「営業の見える化」から

前回、最後にこんなことを伝えた。比較的単純な印刷需要は、さまざまな外部環境の変化により減少するが、顧客の悩みはますます増大し、身近な相談相手を探しており、印刷会社と印刷営業パーソンは好位置にいる。顧客の課題に対応することで印刷会社が成長していくためには、営業パーソンの個人力だけに依存するだけでは力不足であり、全社を挙げた組織的な対応が求められていることは明白である。

従って会社として、まず取り組むべきは「顧客接点」である「営業の見える化」である。特に社外活動である営業活動は、会社が管理しにくいことや営業パーソン自身の抵抗も強く、これまで見て見ぬふりをしてきた。

BCI.では営業の見える化は、営業パーソンの「思考の見える化」と「活動の見える化」の2つの要素で構成されていると考えており、今回は、2つの要素の内、まず「思考の見える化」について考えてみたい。

「ハーマン脳優勢度調査」とは

BCI.では、営業パーソンの日々の行動パターンや顧客とのコミュニケーション(相性)、仕事の進め方、そして結果としての成績などは、本人もあまり意識していない一人ひとり異なる思考特性(思考のクセ)が基盤になっていると考える。

そしてこれらの集合体である営業部全体や会社の思考特性を形成し、顧客や外部から見た時の、その会社の企業イメージや評価につながっている。つまり「個」が「全体」を形成し、その「全体」が企業の「個性(イメージ)」を形成しているということ。さらに顧客接点では営業パーソン個々人の思考特性(クセ)が表に出てくる。

各人の行動が各人の思考特性を出発点としているなら、上司や顧客の主観的・抽象的な判断・評価でなく、できるだけ客観的な基準により、各人の思考特性を評価する必要が出てくる。BCI.では、そのためのツールとして、「ハーマンモデル理論」を使っている。

詳細な説明は別に譲るが、「ハーマンモデル理論」とは、GE(ゼネラル・エレクトリック)の能力開発センター所長であったネッド・ハーマン氏が開発した人間の利き脳(思考スタイル)」を知るための理論と手法である。

本理論に基づく調査である「ハーマン脳優勢度調査」は、一人ひとり異なる「利き脳(思考スタイル)」の割合を測定するツールで、個人はもちろん、組織全体の思考・行動特性を数値化することができるので、客観性に富んだ特性評価により、個人の能力開発や組織の活性化に役立てることができる。

従って適材適所配置、コミュニケーションスキルやリーダーシップスキル開発において広く活用されており、GE、IBM、P&G、コカ・コーラ、マイクロソフト、キヤノン、旭硝子、資生堂など、多種多様な一流企業を中心に採用され、これまでに150万人以上の実績がある。

BCI.でも、印刷業界向けにこれまで300人以上に「ハーマン脳優勢度調査」を実施し、コミュニケーション力強化、人材育成、配置転換、組織改革などに活用している。
調査自体はいたって簡単で、120問の質問に率直に答えるだけ。時間にして約40分ほどで完了する。

「ハーマン脳優勢度調査」によって見えるコト

「ハーマン脳優勢度調査」の結果は、個人別そして営業部門全体の思考特性(クセ)を4つの分野に分け数値化された詳細なデータとして報告される。そして本人と会社に対して、これまで見えるコトのなかった多くの仮説を提供してくれる。

この結果は、個人の能力や技能が高い・低いではなく、思考のクセ(得意・不得意)を表わしているに過ぎず、さらに現時点のものであり、意識改革や行動改革によって思考のクセは変化していくことが知られている。例えば、

・彼が得意な(苦手な)職業は何か
・彼が得意な(苦手な)仕事は何か
・彼が得意な(苦手な)顧客は誰か
・彼が得意な(苦手な)営業活動は何か
・その他

などが見える。

見えるからできること

「ハーマン脳優勢度調査」の結果から見える個人の思考のクセからは多種多様な展開が可能になる。
個人としては、得意な領域のさらなるレベルアップにつながり、苦手な領域の克服のためにやるべきことが明確になる。その結果、意欲が高まり、行動が変わり、自己成長につながる。

営業活動においても、思考のクセは顧客の業種・業界ごとの基本的なアプローチ方法の発見、顧客担当者との良好な関係づくり(コミュニケーション)や、相手の思考タイプに合わせた的確なプレゼンテーションの強化に結び付けることができるようになる。社内においては、同僚、上司、部下とのコミュニケーション向上にも活用でき、仕事の高度化・効率化が期待できる。

また会社としても、各営業パーソンの担当割り当ての最適化、指導育成のポイント発見、能力開発の重点領域の理解、営業組織の風土改革など、組織として効率的・効果的な支援が可能になる。

これまで、個々の営業パーソンのタイプは、主に上司の主観的かつ抽象的な評価に依存していた……とすれば、それはその上司の思考のクセにより評価していたに過ぎず、部下の得意な特性(クセ)を発揮する場を奪っていた可能性がある。そしてそれが常態化、継続化することは、本人にとっても、会社にとっても大いなる損失である。

                        田中 信一(株式会社ビジネスコミュニケーション研究所 代表取締役)

次回掲載予定
「営業の見える化(営業パーソンの活動の見える化)」に続きます。
★お知らせ★
page2015で田中信一氏が登壇します。
2015年2月5日(木)10:00~12:00
「営業の見える化」から始める高収益への道
http://www.page2015.jagat.or.jp/contents/session/30


田中信一
株式会社ビジネスコミュニケーション研究所 代表取締役tanaka

【プロフィール】
■(社)日本経営士会認定経営士
■(社)全能連認定マスター・マネジメント・コンサルタント
■ハーマンモデル認定ファシリテータ

1956年生まれ、福井県出身。専修大学経済学部経済学科卒業後、株式会社桜文社(印刷業)入社。印刷営業や制作ディレクションを経験後、1989年に株式会社ビジネスコミュニケーション研究所設立。
印刷産業を中心に全国で講演、営業関係研修、コンサルティングを行っている。指導内容として「営業活動支援コンサルティング」「中・長期経営計画および年度経営計画の策定・実施コンサルティング」「営業管理職再生講座」「プロジェクト管理術」「営業革新」「業態変革」など多数。
■著作 
『消費・商品トレンド93-94』船井総合研究所刊(共著)、『こころときめく営業楽(学)1,2』日本印刷新聞社刊、『創注営業 実践バイブル』他がある。