第26期クロスメディアエキスパート 論述試験の出題意図と講評
2018年8月26日(日)、全国7会場で第26期クロスメディアエキスパート認証試験が実施された。本試験第2部の論述試験は、架空の企業に関する与件文を読み、顧客の課題を解決するコミュニケーション戦略の提案書を140分の制限時間内に作成するものである。
8ページほどの与件文には、ある企業の事業推移や市場環境、競合企業の動向などが記述されている。提案ではターゲットを的確に絞り込み、適切なメディア選択、メディア連携を実現し、顧客の課題解決をおこなうことが求められる。
出題テーマ
「コインランドリー事業を運営するA社」にコミュニケーション戦略の提案をおこなう。
コインランドリービジネスの動向と課題
コインランドリーは、かつて銭湯などに併設され、学生や単身者など洗濯機を持たない人たちが利用することが多かった。現在では、駐車場完備の郊外型・地方型が主流である。女性でも気軽に出入りできるような、明るく清潔で安心感のある店舗が好まれている。
衣類以外に毛布や羽毛布団まで洗える洗濯機や乾燥機、ペット用品やスニーカー専用の洗濯機もある。働く主婦や家事の時間短縮を求める層の利用が増えている。
この10年は、年に300~500店舗が新規オープンしているとも言われており、全国で16,000店以上となっている。また、コインランドリー経営は、人件費が軽微であり、遊休店舗や土地のオーナー向け、または副業向けビジネスとしても注目されている。
与件の企業は、病院や工場、社員寮などの施設向けランドリー機器販売からスタートし、その後、店舗型コインランドリー向けに販売を拡大し、業績を伸ばしていた。しかし、近年、外資系のランドリー機器メーカーが国内市場に進出し、フランチャイズチェーンによって急速に店舗数を増やす事態となっている。
対抗策として、まずは直営店を開設し、カフェ併設や集配サービス付き、定額制など新スタイルのコインランドリーのブランドを定着させる。最終的にはフランチャイズ化して、全国展開することを目指したい、という設定である。
試験では、この企業の新スタイルを定着させるコミュニケーション戦略の企画提案書を記述することが求められている。
出題意図と判断基準
- 出題企業の課題を解決するコミュニケ―ション提案となっているかどうか。
- 競合他社への差別化を実現できているかどうか。
- ターゲットに応じた適切なメディア選定が出来ているかどうか。
- 起点となるメディアから他のメディアへの連携や誘導を想定しているかどうか。
(一方通行の発信ではなく、メディア連携やメディア誘導を実現できるかどうか) - 顧客との双方向コミュニケーションを想定しているかどうか。
- Webサイトへの集客・リピート増を図るコンテンツ提供や仕組みがあるかどうか。
講評
コインランドリーという業種の最大の特徴は、地域型ビジネスであること、季節や時候に応じた需要機会が多いことである。また、コインランドリーを積極的に利用している層は、実は限定的であると言われている。未体験で、その利便性や快適さを知らない潜在顧客も少なくない。
したがって、周辺地域へのアピールをどうするか、未体験の顧客に何らかの方法で体験してもらう機会を設けること、季節や時候に応じたキャンペーンなどの施策によって、固定客を徐々に増やすことが有効だと考えられる。
解答における施策には、ポスティングチラシ(クーポンチラシ)、SNSの活用による利便性や独自サービスの訴求、体験イベントの実施、デジタルサイネージ活用、会員登録によるポイントサービス、洗濯豆知識の動画コンテンツなどがあった。InstagramやTwitter、FacebookなどのSNSを活用し、双方向コミュニケーションやファン作りを意識したものも多かった。
AISAS、AISCEASなどの消費行動モデルを反映したシナリオがあると、さらに完成度が上がると思われる。
全体としては、以前よりまとまった提案が多くなり、レベルの向上が見られる。今後も引き続き、このようなレベルの高い提案を期待したい。
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