コインランドリー事業のコミュニケーション戦略を提案 ー デジタル×紙×マーケティングの実践 ー

掲載日:2018年11月12日
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第26期クロスメディアエキスパート論述試験の出題意図と講評

2018年8月26日(日)、全国7会場で第26期クロスメディアエキスパート認証試験が実施された。第2部の論述試験は、架空の企業に関する与件文を読み、課題を解決するコミュニケーション戦略の提案書を140分の制限時間内に作成するものである。

コインランドリー事業のコミュニケーション戦略を提案

かつてのコインランドリーは、銭湯などに併設され、単身者や学生など洗濯機を所有していない人の利用が多かった。

現在のコインランドリーは、衣類以外に毛布や羽毛布団まで洗える洗濯機や乾燥機、ペット用品やスニーカー専用の洗濯機もある。働く主婦や家事の時間短縮を求める層の利用が増えている。駐車場完備の郊外型・地方型が主流であり、明るく清潔で安心感のある店舗が好まれている。

この10年は、年に300~500店舗が新規オープンしているとも言われており、全国で16,000店以上となっている。また、コインランドリー経営は、人件費が軽微であり、遊休店舗や土地のオーナー向け、または副業ビジネスとしても注目されている。

与件企業は、病院や工場、社員寮などの施設向けランドリー機器販売からスタートし、その後、店舗型コインランドリー向けに販売を拡大し、業績を伸ばしていた。
しかし、近年、外資系のランドリー機器メーカーが国内市場に進出し、フランチャイズチェーンによって急速に店舗数を増やす事態となっている。

対抗策として、まずは直営店を開設し、カフェ併設や集配サービス付き、定額制など新スタイルのコインランドリーのブランドを定着させることに取り組んでいる。最終的にはフランチャイズ化して、全国展開することを目指したい、という設定である。

出題意図と判断基準

コインランドリーという業種の最大の特徴は、地域(店舗)型サービスであることと衣替えや学校行事など季節や時候に応じた需要機会が多いことである。
また、コインランドリーを積極的に利用している層は、実は限定的であると言われている。未体験で、その利便性や快適さを知らない潜在顧客も少なくない。

したがって、どのように周辺地域へアピールするか、未体験の顧客に何らかの方法で体験してもらう機会を設けること、季節や時候に応じたキャンペーンなどの施策によって、固定客を増やすことが有効だと考えられる。

採点基準には、次のような項目が含まれている。

・出題企業の課題を解決するコミュニケ―ション提案となっているか。
・競合他社への差別化を実現できているか。
・ターゲットに応じた適切なメディア選定ができているか。
・起点となるメディアから他のメディアへの連係や誘導を想定しているか。
・顧客との双方向コミュニケーションを想定しているか。
・ウェブサイトへの集客・リピート増を図るコンテンツ提供や仕組みがあるか。

このような項目が網羅された提案であれば、高得点となる。

講評

解答における施策には、次のような内容があった。
・ポスティングチラシやクーポン活用
・SNSの活用による利便性や独自サービスの訴求
・体験イベント・キャンペーンの実施
・店頭でのデジタルサイネージ活用
・会員登録によるポイントサービス、会員へのDM送付
・洗濯豆知識やコインランドリー活用の動画コンテンツ化
その他、InstagramやTwitter、Facebookなどを活用し、双方向コミュニケーションやファン作りを意識したものも多かった。

ただし、今回のケースでは新聞折込みチラシは適切とは言えない。現在、40代以下の新聞購読率は、かなり低くなっている。30~40代主婦をメインターゲットとするなら、メディア選択として有効とは言えないためである。

企画提案の流れとして、AISAS、AISCEASなどの消費行動モデルを反映したシナリオを折り込むと、更に完成度が上がるだろう。

全体としては、以前よりまとまった提案が多くなり、レベルの向上が見られる。今後も引き続き、このようなレベルの高い提案を期待したい。

 (研究調査部 千葉 弘幸)

【第26期与件:コインランドリー】クロスメディアエキスパート 記述試験