デザインで重要なコミュニケーション能力を鍛える

掲載日:2014年12月24日

「情報をグラフィック表現として再構築することがデザイン」との考えから、通信教育「考えるデザイン講座~説得力は企画力」では、コミュニケーションルールや分析手法を具体的に示している。

デザインの基本は設計能力

印刷会社においてデザインはどのような役割を果たしているのだろうか? 印刷技術の進歩や標準化によって、品質での差別化が困難になっている。どの印刷会社に依頼しても同じような品質の印刷物ができると思われると、価格競争から逃れられない。
でも実際にはどの印刷会社に頼んでも同じ印刷物が出てくるわけではない。同じような印刷物であっても、クライアントの意図を汲んだデザインの工夫や、使用目的に合致したデザイン提案によって、クライアントの満足度は大きく変わってくる。やはりプロに頼むと違うなと思わせる効果こそ、デザインの力ではないだろうか。

「情報をグラフィック表現として再構築することがデザイン」との考えから、JAGAT通信教育「考えるデザイン講座~説得力は企画力」では、そのプロセスで必要となる人間心理に基づくコミュニケーションルールや分析といった手法を具体的に示している。
主任講師の和田義徳氏は「説明責任」の重要性も強調している。「デザインは芸術ではなく、発注者の明確な制作意図がある。それをどう解釈し、具体的表現に落とし込んだかを説明することがデザイン制作に携わる人(営業も含め)の責任である」。

つまり、クライアントの意図が最初にあって、それを具体化するのがデザインの仕事であり、そのデザインをきちんと説明することが求められるということだ。そして、そのために必要なことは、感性ではなく、論理的な力になる。だからこそ、デザインの基本を押さえておく必要がある。

受講者フレンドリーな通信教育を提供

JAGAT通信教育は随時申し込みを受け付けていて、開講日の前に教材一式をまとめて受講者の元に送り、受講者は自分自身のペースで課題を提出して、添削を受け取ることになる。受講期限内に課題を提出して、一定の点数に達すれば修了となる。
通信教育の利点は時間や場所を選ばずに自分のペースで取り組めることだが、対面学習のようにわからない問題をその場で先生に質問することができないのが欠点だ。また、テキストだけでなく、「ここが重要」というポイントを強調してもらえないかという要望があるだろう。
そこで、JAGAT通信教育では、テキストに沿って重要ポイントに絞った添削課題に取り組むことで、学習効果を上げたいと考えている。さらに難易度の高い問題に関しては解説文を付けて理解を深める一助としている。また、添削課題には通信欄を設け、受講者の質問に応えている。

「考えるデザイン講座~説得力は企画力」は2014年7月開講の新コースなので、既存コースの立ち上げのノウハウを活かして、より受講者フレンドリーな通信教育となるように努めた。「考えるデザイン」というコース名のとおり、考える力が必要な応用問題が多いことから、添削後に同封する解説文には、課題のポイント解説だけでなく、模範解答例を多く掲載し、考えるヒントとなるようにまとめている。
和田講師も「選択ばかりでなく記述課題があるというのは、通教の一つのメリットだと思うからです。この記述課題があることで、自分の考え方を筋道立てて文書化する能力がいくらかなりとも養われると思います」と語る。

書籍の表紙デザインから配色について考えてみよう

通信欄が活発なこともこのコースの特徴といえる。「あらためて文章化することでより説得力が出て、デザインの力が強化されると思いました」「理論的裏付けの重要さを再認識しました」「紙面デザインはすべて意味があるものなんだと思いました」など、学ぶ意味を理解してくれているコメントが多く寄せられている。

4回の添削課題には毎回応用問題として記述課題を設定した。第4回では、配色の問題として、書籍の表紙デザイン例から「インパクトのある目立つもの」を選ぶ課題がある。
この課題を考える際には、補色調和、つまり、補色同士の組み合わせが互いの色を引き立て合う相乗効果がキーワードになる。このことに関して和田氏は、以下のように解説してくれた。

補色は色相差が常に最大になるので色環にあるままで使用した場合(つまり「純色」だと)かなり強い対比を示します。これが強すぎて普通は下品になったり目に異常な刺激を受けたりします。そこで実際のデザインでは明度差を変えたり、あいだに他の色彩を入れるなどして使用すると、対比の強さがうまく生きて「互いの色を引き立て合う相乗効果」も発揮されることになるのです。
また、黄色と紫、緑と赤などの配色は使用される場によって意味が違ってきます。多分通常の印刷物では派手すぎてちかちかし好まれないかもしれませんが、「リゾートの」とか「トロピカルな」といった形容詞が付くとどうでしょうか、案外面白いのではないでしょうか。つまり実際の運用ではデザインの目的や制作物の文脈(パラダイム)によって同じ配色でも不自然だったり効果的だったりすることもあるのです。

受講者の熱意に応えて、よりよいコースに育てていきたいと考えているので、添削課題に関する質問やコメントだけでなく、ご意見やご要望もぜひお寄せいただきたい。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)