先のIGAS2018では、デジタル印刷機メーカーを中心にワークフロー製品が多く出品されていた。
小ロットの大量のジョブを効率的に処理するために、後工程までの製造の自動化や製造設計や日程計画という人間の判断業務の自動化まで狙ったものである。
代表的な製品に以下のようなものがある。
・HP PrintOS Site Flow
・キヤノン Production Print Flow Manager
・小森コーポレーション KP-Connect Pro
・富士ゼロックス Production Cockpit
・コニカミノルタ Accurio Pro Connect/Conductor
・リコー TotalFlow BatchBuilder
雨後の竹の子のように唐突にでてきた印象もあるが、元をたどればJDFワークフローの普及に向けた試みとつながる。
当初のJDFワークフローの概念では、MISが司令塔となって、プリプレス、プレス、ポストプレスそれぞれの機器を管理するコントローラーに作業指示を送り、結果としての実績情報を受け取るというものであった。
しかし、この想定には無理があった。指示者であるMISは進捗状況に応じて適切なタイミングで作業指示を出す必要があるが、そのためには進捗状況を常に監視していなければならない。
ところがMISは“お金”を管理するという要素が強く、進捗を逐次管理するというよりも、原価把握のために最終実績データを収集することに重きが置かれている。 この弱点を補うための方法論として、MISが進捗状況を逐次管理して適宜作業指示を行うのではなく、その機能は別のシステムに委ねて三層構造でワークフローを管理しようという考え方がでてきた。
この別のシステムがMESにあたる。Manufacturing Execution Systemの略称で、日本語訳は製造実行システムと訳される。印刷業に限った話しではなく、製造工程が複雑なプロセス産業と呼ばれる製造業では、1990年代後半から導入が進んでいる(らしい)。
page2011カンファレンスでは、印刷業に求められるMESの姿を議論した。
前述のワークフロー製品群は、現状でカバーできている範囲は限定的かもしれないが、MISと製造システムの間をつなぐMESの役割を担うものだといえる。 印刷物の製造においてもデジタル化、ネットワーク化が前提となり、かつてJDFが登場したときに盛んに言われた「全体最適」という言葉が再度注目を集めるだろう。 ワークフローの再構築を考えるときには、このMESという概念が参考になるように思う。
(研究調査部 花房 賢)