未来を創造する~Post未来を破壊する~

掲載日:2015年1月5日


印刷以外のメディア台頭を止めることはできないが、やみくもに新メディアに対抗して印刷ビジネスをおかしくするのではなく、少しでも上手く行く方向に向かうように考えるべきである。

新年明けましておめでとうございます。

と簡単には言うものの、印刷業界にとって本当にめでたいのかどうか?は簡単に断言できない。スマホに代表されるモバイル通信機器が台頭し、印刷メディアの相対的地位低下という現実は否定できないからである。

印刷以外のメディア台頭を止めることはできないが、やみくもに新メディアに対抗して印刷ビジネスをおかしくするのではなく、少しでも上手く行く方向に向かうように考えるべきである。JAGATでは上手く行く様々な方法を考えて、色々なイベントや教育機会を企画している。そのイベントの中でも最も大切なものがpageである。毎年新年早々大変で、正月休み中から準備に追われている。2015年2月4,5,6日の三日間開催されるpage2015でも、印刷ビジネスにプラスになることについてフォーカスしている。そんなテーマで企画しているものをいくつかご紹介したい。

まず初日を飾る基調講演だが、基1「未来を創造する~Post未来を破壊する~」というテーマで、印刷業界の近未来に向かって、徹底的に議論し、何をすべきかまで提示したい。印刷ビジネスの未来は、何にもしないで同じことをしているだけでは決して明るくないというWebb博士の予測を検証し、実際にどのような対処をすれば印刷ビジネスが延命するのか?また印刷ビジネスの可能性が広がるのか??について考える。基本的にはどのようにスマホやWeb、動画を応用して印刷ビジネスのプラスにできるか?ということだが、単に動画だけ扱ったと言ってもビジネスになる訳ではない。どのようにビジネス化、印刷ビジネスのプラスになるかが大事なのである。このセッションでは印刷ビジネスの保守本流を守るためには何をしなければならないかを考えていく。

2014年度JAGATではPODビジネスについてこだわってきた。単純に考えて「必要部数だけ印刷する」というのは論理的で何の矛盾もない。コスト的に、ワークフロー的に、ビジネスで考えると採算が合わないという事だけが問題なのである。そこで世界最大級のPODビジネスを実践している米国のナッシュビルのライトニングソース社を見学してきた。ライトニングソースでは一冊からの印刷・製本を受注して立派に採算ラインに乗せてビジネスしているのだ。この時に訪問した人間たちがそれぞれの立場で、PODビジネスについてのポイントと可能性を検証し、日本だったらどのような問題があり、このようにやれば日本でもPODビジネスが可能になるのか?を真剣に考えるのが基3「PODビジネス、日本で出来るのか?」である。基調講演はビジネス的な内容を検証するセッションが多いが、ここでは技術的なことも時間の許す限りコメントしてみたい。また出版だけに限定せず、商業印刷でのPODにも言及してみたい。

また日本でもPODビジネスに挑戦しようとしている動きがある。共同組合的にPODシステムを展開しようというものである。出版社からの要望とその実現方法をこのセッションで議論して、PODビジネスについてより深く、具体的に考えていこうというセッションがG4「出版社のための小ロットビジネスの可能性~オンデマンドサプライチェーン構築の試み~」である。

基調1とG4に参加いただければ、PODビジネスの何たるか?その問題点、メリットデメリットが明らかになるはずである。普通の印刷ビジネスを考えている方にも、PODという考え方は必須であり、印刷ビジネスのためには必要な情報が満載である。

これらの三セッションは有料だが、page2015ではオープンイベントとして各種団体のセミナーに会場を開放している。もちろんJAGATと深く関係している団体もあり、例えば写真学会のpageオープンイベント技術アカデミーや電塾のpageイベントなどは企画段階から深く関わっている。今回初めて行うのが写真学会の「pageオープンイベント技術アカデミー」なのだが、実験写真家の上原ゼンジ氏が本を自分の本を出版する際に、JapanColor指定紙以外の微塗工紙を使用しているのだが、その際に色々トライ&エラーで特別なプロファイル作成など様々なワークフローを試みたことの実体験を歯に衣着せずに語っていただく。おそらく印刷業界の方にも役立つ話が満載だと思う。またレンチキュラーによる3D印刷やRGB発光インキによる印刷など単なるコストやスピードだけを競うビジネス以外のヒントが得られると思う。

このようなカンファレンスやオープンイベントをたくさん用意しているpage2015、一日だけではなく是非三日間来場して様々な体験していただきたい。

(JAGAT理事 郡司秀明)