平成の印刷を振り返ると、昭和末期に登場したDTPという概念と技術、それを実現させたデジタル技術によって印刷がコモディティ化してしまった時代なのではないだろうか。パソコンとプリンターの普及は、印刷物の製造を印刷業だけのものから、(質はともかく)誰でも製造できるものにしたと言える。
印刷がコモディティ化してしまったとすると、単に印刷物を製造するだけでは印刷業としての優位性を保つのが難しい。加えて、インターネットを介したデジタルメディアの隆盛が、情報を伝えるという紙メディアそのものの相対的な価値低下につながっている。従って、例えば紙メディアvs.デジタルメディアと捉えてしまうと、従来の手ごろな価格で大量に同じものを複製できるという印刷物の強みだけでは、より安価に情報伝達が可能なインターネットを介したデジタルメディアとの競争では不利である。
また、デジタルメディアの普及によって顧客の顧客となるエンドユーザーや、いわゆる生活者の意識や行動も大きく変わってきた。となると、手ごろな価格で大量に同じものを複製できる価値だけでは、もはや顧客の抱える課題の解決を支援することは、相当困難な仕事になっている。今、印刷は新しい価値を生み出さないと、顧客から必要とされる存在が危うくなるのは目に見えているのではないだろうか。
では、どのようにして印刷の新しい価値を生み出すのか。それは印刷で培ってきたノウハウと、長く印刷を通して顧客を支えてきた信頼をもとに、ICT活用によって印刷がマーケティングを取り込み、One to One対応、オンデマンド対応、スピード対応、デジタル印刷活用、種々の加工などを組み合わせることであろう。まさに「デジタル×紙×マーケティング」の組み合わせによって発揮される相乗効果によって生み出される。デジタル(メディア、ツール)は競争相手となる敵ではなく、シナジーを生み出す味方である。
JAGAT info1月号では、特集で印刷会社の経営者でもある塚田司郎JAGAT会長と、網野勝彦JAGAT副会長、メーカー・ベンダーの社長としてさまざまな印刷会社を知る森澤彰彦副会長が、これからの印刷業がどのようにして、どのような価値を提供するべきかを議論している。
また、2月6~8日に開催されるpage2019では、「デジタル×紙×マーケティング」のテーマのもとに各社展示、基調講演、各種カンファンス、セミナーでは、新しい時代にふさわしい印刷ビジネスのあり方を探るので、ぜひ来場し、その目で確かめていただきたい。
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