日本語組版とつきあう その41
字間と行間の選択
文字組版の設計では、使用する文字サイズやフォント、版面サイズ、1行の字数、1ページの行数などを決定する必要がある。
なかでも、字間と行間の選択は重要である。 字間は一般にはベタ組を選べば、大きな問題はでない。特別な目的があれば、ツメ組やアキ組とするが、これを選ぶ場合、ある程度の経験を必要とする。
これに対し、行間は、なんらかの値を選ばないといけない(欧文組などでは行間をゼロにする例があるが、和文では表組など特別の部分で行間をゼロにする例を除き、行間をゼロとはしない)。経験の少ない人の設計した行間では、狭すぎて読みにくい例や、あるいは逆に不必要に広すぎて、バランスを欠いた例を見掛けることもある。
行間を見る目を鍛える
適切な行間を選ぶためには、いろいろな本や印刷物で行間を観察し、どの範囲であれば適切かを確認する必要がある。いろいろな本や印刷物の行間を見て、判断基準を自分なりに作成していくとよい。
市販されている判型がB6の本(実際には四六判の本が多い)では、1段組の本文の文字サイズは9ポイント(または13級)が多い。縦組の場合、本文9ポイントを例にすると、14行(この例は少ない)や15行(この例も最近は少ない)であれば、ほとんどは行間9ポイントである。16行であれば行間8ポ(この例も最近は減っている)、17行であれば行間7ポイント、18行であれば行間6ポイントくらいである。なかには、19行以上もあるが、これはさらに詰まる。
B6や四六判の縦組の本を読む機会も多いので、こうした本で、どれくらいの行間がよいか注意するとよい。私は、16行の行間8ポイントくらいを限度として、読みやすい本を作ってほしいと思っているが、詰め気味の本も多い。
行間と行送り
行と行の間隔を指定する方法には、行間で指定する方法と行送りで指定する方法がある。この2つは、以下の関係があり、簡単に換算できるので、慣れた方法で指定すればよい(以下では、すべて行間で説明する)。
行間=行送り-文字サイズ
行送り=文字サイズ+行間
適切な行間を知るためには、観察した印刷物の行間がどれくらいか調べる必要もでてくる。行間は、ものさしがあれば、次の方法で調べることができる。
文字サイズを調べる
まず、ものさしで調べる場合、文字サイズを次のような方法で調べる。
(1)測る文字組のベタ組になっている部分を探す(ベタ組と確実に判断できる印刷物などで、目を慣らしておくとよい)。
(2)1文字で測ると誤差が大きくなる。そこで、計算しやすいように10文字分の端から端までの長さを“ミリ(mm)”単位で測る。
(3)測った“ミリ(mm)”単位の長さについて3.528(または3.514)か、2.5で割る。
3.528はDTPポイント、3.514はJISポイント、2.5は級数を文字サイズの単位とした場合である。それぞれの1ポイントまたは1級のミリ数を10倍したものである。 最近は、0.5単位で文字サイズを選ぶ場合もあるが、一般には整数単位で文字サイズを選ぶことが多いので、計算した結果、最も整数(または0.5単位)に近いものが、その文字サイズと考えられよう。
行間を調べる
文字サイズがわかったところで、次の方法で行間を調べることができる(図1参照)。行間も、誤差がでないように、また計算しやすいように10行分で測るとよい。
(1)縦組を例にすれば、1行目の右端から11行目の右端までの長さをものさしで測る。これが10行分の行送りの合計になる。
(2)これを文字サイズで採用した単位の数値である3.528(または3.514)か、2.5で割り、ポイント数か級数を求める。これが行送りの大きさになる。
(3)行送りから文字サイズを引いたものが行間の大きさになる。(図1参照)
(図1)
行間を選択する際の目安
書籍を例にすると、行間を選択する際の目安とし、次のようになろう。これを実際の場合に応用し、適切に選択していけばよい。
(1)本文(字詰が多い場合)は、使用する文字サイズの全角かやや詰める。 例:A5、横組、9ポイント、1行35字、行間は9ポイントから7ポイントくらい、詰めても6ポイントくらい。
(2)本文(字詰が少ない場合)は、20字くらいであれば使用する文字サイズの二分までは可能、余裕があれば二分よりやや空ける。空けても文字サイズの2/3くらい。
(3)注などでは、縦組の1段組の専門書などでは字数が多いので、本文の行間にもよるが、注に使用する文字サイズの二分四分から、詰めても二分くらいである。これに対して横組の脚注では、二分くらいか、それよりやや詰めた方が体裁がよい。
(4)表組では、通常は表に使用する文字サイズの二分にすればよい。大きな表では二分よりやや詰めた方がよい(その代わりに5行または10行ごとに大きく空ける)。なお、項目名など部分的に2行にする箇所は、他の項目のセル(こま)の幅をそろえるために行間をゼロまで詰めてよい。
(5)表や図版のキャプションでは、一体として読めるようにキャプションに使用する文字サイズの四分から二分くらい。
(6)見出しを折り返す場合は、一体として読めるように見出しに使用する文字サイズの三分か四分くらい。