リンゲルマン効果と職場の活性化

掲載日:2019年2月13日

企業は、さまざまな人間が集まって仕事をする場所である。しかし、野球チームが優秀な選手を寄せ集めても勝てるとは限らないように企業も同様、人材を集めるだけでは職場や組織はうまく機能しない。

集団で発生するリンゲルマン効果とは

企業のように数人、数十人が集まって働く環境では、リンゲルマン効果が発生しやすい。これは、社会的手抜きとも呼ばれ、単独作業より集団で作業する方が一人当たりの作業量が低下してしまう現象であり、心理学用語のひとつである。要するに、集団になると手抜きをしてしまうという心理状態だ。集団では自分だけ見られることは少なく、よって評価されることが期待薄だ。そのような環境では、努力する必要性を感じなくなり、パフォーマンスが低下するというものである。
ドイツの心理学者リンゲルマンによる綱引きの実験では、1人で綱引きをする場合と、複数人でする場合の個人が発揮する力を調べた。その結果、1人のとき100%とすると2人の場合は93%、3人では85%、8人ではなんと49%になり人数が増えるとともに一人の力が発揮されなくなる状態になったという。メンバー数が増えるほど、一人あたりの貢献度が低下する結果に至ったのだ。

企業にあてはめると、たとえば複数のメンバーに作業を指示すると、誰かがやってくれるだろう、という心理が働いてしまう。したがって、メンバーを限定した指示が必要だということになる。
別の実験では自分のことを見てくれる人物、応援してくれる人物が存在する場合、集団の中でも手を抜かず頑張るという結果になったという。自分の頑張りを適切に評価してくれるシステムがあれば改善されるというわけだ。集団になると手を抜く、いわゆる社会的手抜き現象は、集団で何かをする際必ずついて回る問題だ。しかし、応援・見守りや評価システムなどによって改善も可能になる。また、以前このコラムにも書いたが、地位が低いメンバーが優秀な意見を発言しても採用されないなど本来組織として持っている力を発揮できない現象(プロセスロス)は、組織にとってマイナス要因だ。

問題を認識して対話すること

野球チームは、人材を集めるだけで機能し活性化することはない。一方、組織にはタスクとリレーション両方が重要だという。
タスクは、文字どおり仕事や業績への注力だ。リレーションは人そのものや人間(信頼)関係に注力することである。
たとえば、従来盛んに行われたQC活動などは、主要業務への集中化などを背景に影を潜める傾向にあり、対話による業務プロセスの改善機会が減少した。また、非効率ともみられがちなコミュニケーション機会も低下傾向である。
職場や組織を活性化させるには、職場内の問題解決より、現状の問題を認識することの方が重要だという。たとえば、ある管理者が会議中の出席者の発言が少ないので1回は発言するというルールを設けた。確かに、この解決策によって発言は増えるが、会議が活性化するわけではない。

この例では、問題を認識する前に、問題解決をしてしまっているのだという。管理者に必要なのは、安易な解決策を行うことではなく、職場メンバーとともに問題の認識に取り組むことである。メンバーと対話することで現状起きていることを共有し明確になった問題についてどのように対応していくか考え実行する、それができる関係性を構築することが重要だという。
職場での人間関係の問題は職場ごとに異なり特有なもので、どの職場にも効く万能策はないという。だからこそ各現場において、管理者を中心とした問題の認識と対話が重要であり職場活性化の第一歩になる。

(西部支社長 大沢 昭博)
(参考:日本経済新聞、南山大学 中村教授)

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