【マスター郡司のキーワード解説2019】色分布(その1)

掲載日:2019年2月28日

今回は「色分布(その1)」について取り上げる。

JAGAT 専務理事 郡司 秀明

色分布(その1)

図1のような図は見たことがあると思うが、ヒストグラムと呼ばれるものである。ハイライト部からシャドー部まで濃度分布が均等に撮影されているか?の評価に使われるのだが、均等に写っているからといって良い写真とは限らない。そんなテストチャートのような写真に価値があるわけではない。プロの写真はローキーやハイキーに振って価値が出てくるものだ。

最近、DTPは儲からないといって、DTP部門への人材登用や人材育成がおろそかになっているようだが、印刷ビジネスにとって色調に関するセンスはとても重要なので、今回はキーワードシリーズでは少々変わり種だが、「色分布」について解説してみたい。最近この手の人材不足に関したトラブルがすごく多いので少々コメントしておく必要を感じたからである。

私は芸術系の大学で教鞭をとっている。大学ということもあってグレー再現やグレーを大事にして講義や実習をする。しかし、私はひねくれた先生なので、写真がCGやデジタルになると、銀塩写真のようにグレーを再現するのに苦労しない。むしろグレーを若干外すことで、良い作品になると教えている。グレーを正確に再現できたからといってお金がもらえるわけではない(昔はグレー再現が難しかったので価値があった)。例えばボーンチャイナと便器では同じ白だって表現の仕方があるはずだ。カレーが盛られている白い食器を藍グレーで再現したら(便器のような場合は清潔感が出る)、なんか変なものを連想してしまう??そんな感じだ。

私の講義では、ヒストグラムよりも色分布図のほうが大事だと言って、さまざまな色分布事例について解説している。特に色関係の仕事をしていると、こういう分布図を多用するので、MDツールとして開発したものをJAGATではTGツールとして公開している(https://www.jagat.or.jp/cat6/tgtool)が、管理料がかかるので手数料はいただいている。

さてTGツールはさまざまな機能が付いているのだが、画像の画素の色がxy色度図上でどのように分布しているか?ビジュアルにチェックできるようになっている。小さい三角形がsRGBで大きいものがAdobe RGB色域となる。例えばカクレクマノミ(赤い魚)の写真がある。この分布は図2のようになり、赤い部分(右側)はAdobe RGBからはみ出しそうになっている。同様に海の中は色の宝庫なので図3をご覧いただきたい。Adobe RGB絶対の写真だということが分かるはずだ。それではこれをどのように使うかということなのだが、これを使うためには写真も工夫するとさまざまな分析ができる。

図4がAdobe RGBいっぱいに展開された分布図だが、元々CG画像なので理想的な色分布をしている。図4のRGBデータをJapan Color 2001でCMYK変換すると図5のように、高色域インキKaleidoを使うと図6のようになり、CMYKでも緑がすっと伸びているのが分かると思う。Japan Color 2001だと少し右曲がりになっているが、KaleidoはG色の上側にすっと伸びていると思う。

今回は色分布の何たるか?!についてさわりを述べたが、次回はこの応用編で核心に迫りたいと思う。

(JAGAT専務理事 郡司 秀明)

(会報誌『JAGAT info』 2018年12月号より抜粋)

図1
図2
図3
図4
図5
図6