ブランディング×デザイン力で印刷会社のソリューション力を高める (連載第7回) ブランディングの価値をデザインで表現するという課題は、ブランドの世界観をルール化することで解決していく。 前回は、ブランド要素とブランド体験について解説した。印刷会社として戦略構築からこれらを軸にクライアントのブランディング支援をしていくことになる。 そこで、まずはブランド要素について考えてみたい。前回、紹介したようにブランド要素とはブランドを識別できる最少の単位であり、ネーミングやロゴ、 キャッチコピー、色、パッケージなどがある。これらを見てみると、デザイン・クリエイティブの領域であり、印刷会社の制作部門に関係が深いことがよくわか る。 クライアントと共に構築していった戦略、ブランド・アイデンティティというブランドの価値を広告・販促物のデザイン・クリエイティブで表現することで、印刷会社としての価値も高まっていくことになる。 ブランディングの価値を表現するということは、ブランドの世界観を創りだすことでもある。世界観を創るには、広告・販促物のデザイン・クリエイティブ表現が一貫してブランド・アイデンティティを表現していなければならない。 ブランドの世界観は(クライアントの)顧客の心の中にできるものである。これはブランド・イメージという言葉で言い替えることができ、ひとつのデザインだ けでできあがるものではなく、様々なデザインやコピーを含めた広告・販促物や企業活動と顧客の接触を何度も繰り返し、その時々に受ける印象がいくつも組み 合わされできあがるものである。クライアントに提供する広告・販促物は、全てのデザイン・クリエイティブ表現で一貫した印象を与えるように意図的に制作しなければいけないのである。 そのためには、ブランドの世界観を創るものとして『トーン&マナー』として、デザイン・クリエイティブのルールを作成することが重要である。通常、ブラン ディングの戦略が構築された際には、ブランド・ステートメントという「どのようなブランドか」と、ブランド・アイデンティティや対象顧客や企業としての立 ち位置が明記されたものができあがる。これを関係者全員で共有し、ブランドの一貫性を保つのであるが、さらにトーン&マナーをデザイン・クリエイティブの ルールとして関係者で共有する必要がある。 ブランディングで、クライアントのビジネス全体を支援していくとなる場合、印刷会社として全社でクライアントのブランディングの戦略や価値を把握すること が必要不可欠である。トーン&マナーにおけるルールによって、営業と制作の意志の統一、共通認識が得られることになり、制作の効率も向上することになる。 また、トーン&マナーを明確にすることで、クライアントへ広告・販促物を提案する際のデザイン表現の意味・理由付けとなり、説得力が向上するメリットもあ る。制作過程において発生する、広告・販促実施後の成果に関係ないであろう修正依頼にも、ブランディングの戦略から派生したトーン&マナーを共有すること により低減することも可能である。 次回からは、具体的に顧客に伝えるべきブランド・アイデンティティをどのように表現し、トーン&マナーとして落とし込むのかを見ていきたい。 連載第1回 印刷会社に求められる顧客ビジネス支援のブランディング 連載第2回 印刷会社がクライアントに提供すべきもの 連載第3回 印刷会社が取り組むべきブランド戦略構築の流れ 連載第4回 活動の軸になるブランド・アイデンティティとは 連載第5回 顧客の心の中で自社の占めるポジショニング 連載第6回 印刷会社ができるクライアントのブランド価値の表現 小澤 歩(おざわあゆむ) 有限会社グレイズ代表取締役 http://ozawaayumu.com/ (財)ブランド・マネージャー認定協会マスタートレーナー http://www.brand-mgr.org/ 東京都江東区出身。広告販促制作会社等でのグラフィックデザイナー、アートディレクターを経て、2002年に広告制作会社として (有)グレイズを設立。様々な企業の広告販促物の企画デザイ 制作を手がけ、さらにブランディングやマーケティング、心理学等を踏まえたデザインの戦略を使いクライアント企業の成果を出す。現在は企画デザインだけで なく、デザイン戦略を軸にした企業全体の課題解決、価値を高め差別化をするブランディング、販売促進のコンサルティングのサービスも提供。 また(財)ブランド・マネージャー認定協会トレーナーはじめ全国の企業・団体等で、デザイン表現の戦略やブランディング、マーケティングを伝える研修や講師としても活動。
ブランドの価値は世界観とトーン&マナーでつくる
掲載日:2014年6月24日