JAGATが全国の印刷経営者を対象に実施した毎年恒例の調査結果から、2018年と2019年の特徴的な動きについて考察する。
①2018年の振り返り
天災の被害を受けた企業が多いことに、心からお見舞い申し上げたい。2018年は豪雨・台風・地震の被害が広域にわたった。「厳しい」「低下」「減少」「不振」といった単語が目立つ。「折込チラシがさらに減少して厳しい」など、輪転仕事の具体的な減少を示す声が複数あった。「紙離れ」「デジタル化による紙媒体の減少」など、デジタルシフトを追認する流れも確認される。 構造不況の出版印刷会社では「売り上げ減を商業印刷でカバー」「商業販促物の受注で埋め合わせ」と隣接する印刷分野に活路を開くケースも見られた。「春に導入したUV印刷機が徐々に生産に寄与」「新システムが成果を出すまでに至っていない」など、新たな設備や取り組みが実を結ぶには時間を要するとした企業が多い踊り場の年でもあった。
②2019年の重点施策
生産性(自動化・生産性効率・働き方改革等を含む)を挙げたのが9社で最多。これまで触れられることのなかった価格が3社から挙げられているのも特徴だ。用紙値上げが報じられるなか、価格積算の見直し、価格転嫁に踏み込んで収益性を改善しようとの動きが見られる。「AR」「サインディスプレイとデジタル事業」「ウェブマーケティング」「紙+動画」「ウェブサイト大幅改修」など、自社の強みを生かした商品開発とデジタルマーケティングを結び付けた営業展開が多いのも特徴だ。 特に象徴的な一つのキーワードが見当たらないのも特徴といえる。例年、電子書籍、デジタル印刷、IT対応、働き方改革などがあったのだが2019年はない。デジタル対応といっても電子書籍・スマホ出現から10年以上が経ち、各社で一通りの対応は終えた一巡感がある。補助金を活用した設備投資も充足感があり、焦点は導入から活用に移り始めている面があるようだ。
③2019年の抱負
「五輪・選挙など特需を取り込む」「2019年は大きなイベントがあるので対応」「改元や統一地方選など印刷チャンスを取り込む」など、期待も例年になく大きい。一方、「用紙値上げ」「増税」への対応も必要な年であり、これら好材料と不安材料が入り混じる展望となっている。 「地域活性化のために業種間連携を進める」「地元商工会議所と連携」など地域に新たなつながりの構築を模索する動きも。改元もあって文字どおり「社会が変化する年」「新時代」に対応しよう、考え方もリセットしようとの姿勢が多い。
(『JAGAT info』 2019年1月号,印刷経営ウォッチング,p62-67より抜粋して要約)