Web to Printは次世代のパブリッシング技術か?

掲載日:2015年1月28日

分野や対象を限定することで、Web to printによる自動化、スキルレス、ワンソースマルチユースなど次世代のパブリッシングが実現する。

名刺のWeb to Printはもはや常識?

Webブラウザ上での自動組版、デザインテンプレートや共通パーツを使った簡易レイアウトをおこなうWeb to Printが徐々に普及している。

Webブラウザ上で操作するため、DTPのような専用PCやアプリケーション、フォント環境も必要としない。さらに、専門の知識やスキルを身に付けたオペレーターやデザイナーを必要としないことが最大のメリットである。

Web to Printソリューションとして典型的な例を挙げると、名刺のWeb to Printがある。
大企業では毎年のように大規模な組織変更や人事異動があり、年に数万人(箱)分の名刺を発注することもある。また、かつては地域ごとに地元の業者に発注していたため、用紙やデザイン、品質、価格もバラバラだったという企業もある。
受託する印刷会社側でも、典型的な多品種小ロットのため、対応できないところも多かった。

近年の名刺製作は、Web to Printソリューションによってデザイン統一に加え、総務部などでおこなわれていた受発注やチェック業務、発送管理なども効率化されている。
依頼部門で氏名や部署名、住所や電話番号、メールアドレス、送付先などのデータを管理しており、データ入力はほとんどない。自動組版、レイアウトした結果は、即座にプレビュー画面でチェックすることができる。経費管理も透明化され、操作も簡単で特別な知識を必要としないなどのメリットがある。

全国各地の地域ごと、あるいは店舗ごとに定期的に発行するチラシやDMの製作でも、このようなWeb to Printソリューションを利用して業務を効率化した例が増えている。

大規模な業務マニュアル制作・発信システム

アパグループは、全国に260店以上のホテルチェーンを抱えるホテル・リゾート事業の企業である。フランチャイズを含めると従業員は3,000名を超えると言う。
事業や人員の急拡大やホテル事業のフランチャイズ展開が決まったことで、従業員マニュアルの整備が急務になっていた。

そこで、従業員向けの業務マニュアルや研修教材、トップからのメッセージなどを「作成」「発信」「管理」するために、株式会社フィットのマニュアル向けWeb to Printシステム「SymManual」を導入した。
(※アパグループのSymManual導入事例)

「SymManual」によって、写真・テキストや動画を、Webでも紙でも作成・発信することができる。
業務マニュアルとして、ブログ感覚で写真・テキストや動画を入力することができる。
ホテル業務であるため、文章や写真だけでは伝えにくい動作や立ち居振る舞いでも、動画マニュアルであれば容易に理解することが出来る。しかし、集合研修の教材などでは印刷物が必要になる。印刷物として組版レイアウトの品質も要求される。また、レストランで提供するための料理レシピなど独自のニーズもある。
このシステムでは、Webでも紙でも簡単に参照・配信でき、十分な品質を備えている。

このシステムの導入前は、1年間かけて100ページ程度のマニュアルしかできなかった。担当者は忙しい業務の合間にマニュアルの原稿を準備していたため、思うように進められなかった。また、文章中心のマニュアルではなかなか利用されていないのが実状であった。

「SymManual」の導入後、1年半で2000ページ分のマニュアルを制作することができたと言う。写真・テキストや動画を活用しているため、入力・編集も修正も容易である。利用者の反応が即座に返ってくるため、担当者は張合いもある。

業務マニュアルの本当の目的は、制作者と利用者とコミュニケーションツールである。Web to Printソリューションとして対応したところが、成功の理由だと言えるだろう。

【関連イベント】:
【page2015カンファレンス・2月4日(水)15:45~17:45】

【G2】「Web to printの新展開」<Web上で動作する新たな組版エンジンの可能性>

Web to printは、独自の組版エンジンが動作するものであり、分野によってはDTPに置き換わる可能性がある。専門的な知識やスキルなしに自動組版や簡易レイアウトが行うことが可能で、印刷物と電子コンテンツのワンソースマルチユースも実現できる。これからのWeb to printと新たな組版エンジンについて議論する。

(JAGAT研究調査部 千葉 弘幸)