凸版印刷株式会社(代表取締役社長:金子眞吾、以下 凸版印刷)と国立美術館 国立西洋美術館(館長:馬渕明子、以下 国立西洋美術館)は、クロード・モネ≪睡蓮、柳の反映≫の欠損箇所の推定復元を実施。このたび完成した。
この復元画像は2019年6月11日(火)から国立西洋美術館で開催する企画展「国立西洋美術館開館60周年記念 松方コレクション展」に合わせて現在公開中。
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画布の上半分が欠損した発見時のクロード・モネ ≪睡蓮、柳の反映≫(国立西洋美術館所蔵)
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約60年ぶりに発見された≪睡蓮、柳の反映≫は、画布の半分近くが欠損しており、作品の全体像が確認できるのは欠損前に撮影された白黒写真のみだった。
今回、国立西洋美術館による修復や自然科学的調査や国内外の美術館でのモネの作品調査および、筑波大学の協力によって開発したAI技術による色彩推定結果を踏まえ、≪睡蓮、柳の反映≫の欠損部分をデジタル推定復元に成功した。
凸版印刷は、国内外の貴重な文化財を後世に継承するために実物のデジタルアーカイブや消失文化財のデジタル再現に取り組んでおり、この分野で多くの実績をあげている。
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クロード・モネ≪睡蓮、柳の反映≫の推定復元について
復元に当たり、北九州市立美術館や地中美術館、マルモッタン・モネ美術館などが収蔵している、描いた時期やモチーフが近い作品を中心にモネの作品の調査を実施。
≪睡蓮、柳の反映≫の復元は、同作品残存部分と白黒写真を主たる手がかりとして実施した。
国立西洋美術館が実施した残存部分の科学調査により、本作品に使用されている絵具を特定。同様の絵具を用いて原寸大に画き、同時期の他の作品と比較することで、モネが描く際の手順や特徴などを探っていった。
また、白黒写真については、フランス文部省・建築文化財メディアテークの協力を得て、その撮影原版にあたるガラス乾板から高精細にスキャンされたデータを入手。高精細スキャンデータと作品の現存部分を比較し、当時の撮影環境なども推定することで、白黒写真から得られる色彩情報の精度を高めた。
今回、色彩を推定する手がかりとしてAI技術を活用。モネの作品画像を筑波大学の協力により、モネの様々な作品からその彩色パターンをAIに学習させ、≪睡蓮、柳の反映≫の一部色彩情報と合わせて全体の色彩を推定する仕組みを実現。人による推定を、AI技術による推定によって検証し、客観性を高めた。
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企画展「国立西洋美術館開館60周年記念 松方コレクション展」
会期: 2019年6月11日(火)~ 9月23日(月・祝)
会場:国立西洋美術館
※松方コレクション展公式ホームページ
お問合せ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
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1~ 松方コレクションとクロード・モネ≪睡蓮、柳の反映≫について ~
松方コレクションは、神戸の川崎造船所(現・川崎重工業株式会社)の初代社長などを務めた松方幸次郎氏が、1910年から1920年代にヨーロッパ各地で蒐集(しゅうしゅう)した美術品のコレクションである。コレクションの一部は戦後、日本へ「松方コレクション」として寄贈返還、これを保管展示するための美術館として1959年に国立西洋美術館が設立された。 ≪睡蓮、柳の反映≫は、1921年に松方氏がモネから直接譲り受けた、代表的な連作「睡蓮」の中の1点である。横4.25メートルの大作で長い間所在不明だったが、2016年に画布の上半分が失われた状態で発見された。パリ・オランジュリー美術館の「睡蓮」の大装飾画を構想する過程で描かれたとされ、画家の制作プロセスを考えるうえでも、意義のある“幻の大作”である。
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