表(オモテ)ケイと裏ケイ

掲載日:2015年4月6日

日本語組版とつきあう その42

小林 敏(こばやし とし)

ケイ線の使用

ケイ(罫)線は、印刷面や項目の区切り、あるいは飾りとして、表組などで使用されている。ケイ線は、実線のケイ線だけでなく、波ケイ、かすみケイ、みしんケイや、各種の飾りケイも使用されている。しかし、最も一般的なケイ線は実線であり、なかでも表(オモテ)ケイ、裏(ウラ)ケイ、中細ケイは表組でもよく使用されている。

活字組版のケイ線

一般に、活字組版でケイといった場合、アルミ製ないし亜鉛製である。線の太さは、ケイ線の材料の幅で示し、1ポイント、2ポイント、4ポイントのようにポイントを単位としたものと、五号八分、五号四分、五号二分のように、五号(10.5ポイント)を基準としたものが使用されていた。ケイの長さは、一般に67cmで、ケイ切り機で必要な長さに切って使用していた。

活字組版の表ケイ・裏ケイ・中細ケイ

活字組版の表ケイと裏ケイは、模式的に示すと図1のような形をしている。このケイ線の細くなった部分を上にして使用すると表ケイとなり、上下を逆にして使用すると裏ケイとなる。同じ材料の上下を反対にすることから表と裏の名称が生まれた。中細ケイは、上部の細い部分を、やや太くし、表ケイと裏ケイの中間の幅になるようにしたものである。この上下を反対にしても、裏ケイとして使用できる。
したがって、活字組版の表ケイ・裏ケイ・中細ケイのそれぞれの印刷として表現される線の幅は異なるが、台の部分は同じ幅となる。 なお、表ケイと裏ケイの台の幅としては、1ポイントのものと、五号八分(約1.3ポイント)のものとがあったので、1ポイントの裏ケイと五号八分の裏ケイでは、後者の線の方がやや太くなる。

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(図1)

コンピュータ組版のケイ線

コンピュータ組版では、ケイ線の幅は小数点以下の細かい数値で指定できるので、活字組版のように固定した幅である必要はない。しかし、組版を設計する立場で言えば、小数点以下の細かい数値は問題ではなく、活字組版で使用していた表ケイ・裏ケイ・中細ケイとほぼ同じものが実現できればよいという場合も多い。

コンピュータ組版における組版の設計・指定では、厳密な幅を実現したい場合は、数値で指定する方法もあるが、表ケイ・裏ケイ・中細ケイの名称で指示する方法もある。例えば、表組の一番上のケイ線は裏ケイを使用し、その他のケイ線は表ケイを使用する、といったように指示できる。

そこで、コンピュータ組版における表ケイ・裏ケイ・中細ケイの幅が問題になる。
JIS X 4051では、“参考”として、表ケイ・裏ケイ・中細ケイの幅に以下の数値を掲げている。

・表ケイ   0.12mm
・中細ケイ  0.25mm
・裏ケイ   0.4mm

必ずしも、この数値にそろえる必要はないが、こうした数値を参考にして、実際の数値を決めていけばよいだろう。

表組で使用したケイ線のスペース

活字組版のケイ線は、実体としての幅をもっていたので、表組のサイズを計算する際には、ケイ線の幅を考慮する必要がある。例えば、左右の4つのこまの幅が、8ポイントの6倍、4倍、4倍、4倍で、こまの中間に3本の表ケイ(幅は1ポイントとする)を使用した表組の左右の幅は、以下の計算から147ポイントとなる。

8ポイント×18倍+3ポイント=147ポイント

これに対し、コンピュータ組版では、ある文字とケイ線のアキを指定した場合、一般にケイ線の太さの中心までの距離を指定したアキにしている。つまり、ケイ線に実体としての幅がないということになる。 表ケイのように幅が狭い場合は問題はでないが、ある程度の幅があるケイ線を使用する場合は、ケイ線の幅を考慮して、配置する文字とケイ線のアキを指定する必要がでてくる。

日本語組版とつきあう (小林敏 特別連載)