京都大学と凸版印刷、アートの産業応用を目指す共同研究を開始

掲載日:2019年7月12日
京都大学大学院総合生存学館特定教授・土佐尚子による日本の美をテーマとしたアートの社会実装に向けて、共同研究「凸版印刷アートイノベーション産学共同講座」を設置

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国立大学法人京都大学(京都府京都市、総長:山極壽一、以下 京都大学)と凸版印刷株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:麿秀晴、以下 凸版印刷)は、アートと最先端テクノロジーを組み合わせてイノベーティブな社会的価値創造を目指す「凸版印刷アートイノベーション産学共同講座」を、2019年5月に京都大学大学院総合生存学館に設置、3年間の共同研究を進めます。

本産学共同講座では、京都大学大学院総合生存学館特定教授・土佐尚子(以下 京都大学教授・土佐)の日本の美・文化を切り口とした「Invisible Beauty:先端技術で見える自然の美」をテーマにしたメディア・アートと、凸版印刷が持つ表現技術を組み合わせ、アートの社会実装に取り組みます。

具体的には、アナログな物理的世界の色彩や形状を、先端技術で捉えてデジタル表現するアート表現から新しい価値の創造に挑みます。またそのアート表現を用いて様々な社会実装を行い、新しい工業意匠向け商材から都市開発まで産業応用を目指します。

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17月8日に行われた講座開設についての記者会見
(左から 凸版印刷 中尾常務、同 大久保副社長、京都大学 山極総長、同 寳学館長、同 土佐教授)

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背景

京都大学教授・土佐は、アート・カルチャー・テクノロジーを兼ね備えた人財や組織がイノベーションを起こすことができるとした「アートイノベーション」の先駆者であり、アートとテクノロジーで構成される現代美術が社会イノベーションを生み出す仕組みと日本の美・文化を切り口とした研究を進めています。その中で、アートイノベーションを用いて、資本化できていない芸術文化資源を方法論により経済価値に変換すべきという考えのもと、「物理現象としての美を発見するアーティスト」「発見した美を数式化する学者」「数式化された美をコンピュータでデータ化する技術者」の3者連携が必要と提唱しています。

凸版印刷は、印刷技術で培われたカラーマネジメント技術や高精細な画像データ処理技術、形状を精確にデジタル化する計測技術といった先端表現技術を活用し、4K8K映像表現やバーチャルリアリティー(VR)、デジタルアーカイブなどのコンテンツソリューションを提供しています。また社会的価値創造企業として、既存の枠組みから脱却して新たな価値を生み出すイノベーションの創出という社会全体の要請に対しても、取り組みを強化してきました。

このたび京都大学と凸版印刷の両者は、アートと先端映像表現を切り口に社会をイノベートしていくことを目指し、両社のリソースを有効に活用できる枠組みとして、この共同講座の開設に至りました。

共同講座の概要

・名称:凸版印刷アートイノベーション産学共同講座
・設置場所:京都大学大学院総合生存学館
・参画機関:凸版印刷株式会社
・研究期間:2019年5月 ~ 2022年4月

主な研究内容

・アートコンテンツの研究ならびにアート技術の開発:
アート・カルチャー・テクノロジーの境界領域において、日本美(※1)をテーマとしたコンテンツを制作し、先端映像表現の産業応用として社会実装するための方法論確立に取り組みます。

音圧により躍動させた流体をハイスピードカメラで撮影・制作する京都大学・土佐のアート作品「Sound of Ikebana(サウンドオブ生け花)」を3Dモデリング化し工業意匠に応用。アナログの自然界から生まれたデジタルアート研究のプロジェクト化、これらのアートイノベーション研究成果の発表、成果を用いた社会貢献を目指します。

また、アートを活用した効果的な空間演出手法の体系化・構築など、新しい価値創造技術の開発を行います。

・アート思考による人財開発:
アーティストの創造プロセスを応用した新ビジネス領域開拓手法や企業ブランディング手法の構築、新しい価値創造を生み出すことを目的とした人財育成のためのアートイノベーション手法の開発を行います。

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音の振動から作られたデジタルな「Sound of Ikebana」
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2016年度文化庁文化交流使の任命を受け8カ国10都市を訪問し、ニューヨーク・タイムズスクエアの60以上のビルボードに
2017年4月の1ヶ月間、毎夜11:57から3分間日本の春の花を上映し、文化交流を行なった「Sound of Ikebana(春)」

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※1日本美について
自然界に存在する肉眼では確認できない瞬間的な物理現象が作る形状に見る、日本的美しさを表す京都大学教授・土佐の造語です。
* 本ニュースリリースに記載された商品・サービス名は各社の商標または登録商標です。
* 本ニュースリリースに記載された内容は発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。

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■京都大学教授・土佐および研究内容について
土佐研究室では、芸術とテクノロジーをつなぐ「アートイノベーション」を研究しています。

インターネットにより地域や民族に根ざしていた文化が「フラット化」されてきた世界においても、私達は文化を脱ぎ捨てることはできません。そのなかで、いままでコンピュータで定量化できなかった感情・意識・物語・民族性といった人々に内属するものを扱い、精神に触れるアートイノベーションがより不可欠になっており、その研究によりグローバルコミュニケーションの深化を目指しています。

特に日本文化のコンピューティングに注目し、これまでコンピューティングの対象となって来なかった
(1)日本の移ろいやすい気象・ 自然風土「もののあわれ」などの無常思想や「わび、さび」などの美意識
(2)日本文化とアジア文化の関係
(3)神仏習合を根底とした文化構造
(4)和歌、俳諧や能などの日本語独特の特性
(5)日本的 意匠(紋、織、色、型)
を研究しています。

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■略歴
最新の科学技術を駆使して作品を制作するメディア・アーティスト。1985年に制作した作品「An Expression」がニューヨーク近代美術館に収蔵されている。2005年より、京都大学の教授として「メディア・アート」などの講義を受け持つ。1999年東京大学大学院工学研究科にて芸術とテクノロジー研究で博士号取得。2002?2004年 マサチューセッツ工科大学Center for Advanced Visual Studies フェローアーティストを経て、現職。

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■著書紹介

Cross-Cultural Computing: An Artist’s Journey
著者:Naoko Tosa/出版社:Springer UK

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カルチュラルコンピューティング
著者:土佐尚子/出版社:NTT出版

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TOSA RIMPA 土佐尚子作品集/出版社:淡交社

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■研究室紹介

http://tosa.gsais.kyoto-u.ac.jp/   

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■凸版印刷の先端表現技術について
凸版印刷は、長年培った印刷テクノロジーを発展させ、生活者に向けた新たな価値を創造する先端的表現技術を開発しています。

一般に「人が得る情報の八割から九割は視覚に由来する」と言われていますが、凸版印刷は独自のバーチャルリアリティー技術と表現・演出技術により、起こりうる未来をあらかじめ事前に視覚によって確認・体感出来るプラットフォームを開発し、展開しています。

今後さらにこの取り組みを、5Gによる通信環境の技術革新と連動させ、物体や空間の高精度三次元計測技術、リアルタイム・超臨場感・低遅延の遠隔操作感などを取り込み、さらなる進化を予定しています。

XR(VRやARなどの総称)技術による史跡探訪プラットフォーム「ストリートミュージアムR(※2)」を活用した遠隔歴史教育や、自然災害の猛威の可視化による「VR避難訓練システム」の研究・開発などを加速させ、社会課題解決とSociety5.0への貢献を目指していきます。

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※2ストリートミュージアムについて
凸版印刷が開発・提供する、過去だけではなく未来都市などを自由にタイムトリップできる、VR技術を活用した新しい観光体験サービスです。https://www.toppan.co.jp/solution/service/streetmuseum.html