新たなビジネスの柱を創るために必要な人材育成

掲載日:2019年7月16日

印刷業界では、今後のビジネスの展開を見据えて、中長期的に新たな収益の柱となる新商品・新サービスの開発が求められている。しかし新たな需要を掘り起こし、新ビジネスを構築しようとしても、ゼロから立ち上げるのは困難を伴う。


新しいビジネスを開発し、推進するためには、まずは知識やノウハウを備えた人材の確保が必要になる。自社が現在までに積み上げてきた既存事業の棚卸を行い、市場における自社の立ち位置を把握する。自社の事業特性や強みを多方向から検証した上で、ビジネスの方向性を見きわめ、取り組むべき商品・サービスを選定する。
こうした課題を克服し、新事業を将来の柱として実現するためには、マーケティング知識をベースにした開発手法を実践に活かせる人材を育成し、さらにそのノウハウを社内全体で共有することが重要だ。

日本印刷技術協会では、毎年10月から約半年にわたり、講師が印刷ビジネスの開発手法からビジネス立ち上げ後のプロモーションまで、全7回を通して、参加企業を1社1社直接サポートするコンサルティング型研修「印刷ビジネス開発実践講座」を開催している。実際の案件をもとにノウハウを習得し、自社の新サービス開発を担える人材の育成を目指している。過去、同講座を受講し、そこで体験したメソッドをもとに、試行錯誤を重ねながら、新サービス開発に取り組んだ印刷会社2社の事例をお伝えしたい。

■顧客視点を意識した提案が採用
従業員200名の都内にある印刷会社では、営業・DTP制作を中心に生産現場も交え、12名のプロジェクトチームを発足し、ターゲット企業の情報収集から検証・提案までのプロセスを共有する仕組みをつくった。ある顧客企業には、きめ細かなヒアリングを通して先方の困りごとの要因を抽出し、データベースを使ったアプリで業務改善を行う提案が採用されるなど、一定の成果を見た。長年取引のある会社であったが、請負型の営業から顧客視点を意識した提案をしたことによって、顧客の見方も「印刷をお願いする会社」から「相談できるパートナー」に近づいたという実感をもったという。その後も定期的に提案予定のプレゼンや進捗状況の報告会を社内で実施し、チーム外の社員への情報共有にも努めている。

■既存のサービスを検証し新サービスを開発
創業48年になる都内に自社直営の印刷・製本工場をもつ印刷会社は、2011年より冊子に特化した「印刷通販サービス」を稼働。2015年に顧客のニーズに応じて注文内容を細かくカスタマイズできる「相談できる冊子印刷」にコンセプトを変更したところ、売り上げが大幅に増加した。その後、2019年に姉妹サイトとして、「相談できる」とは逆の発想から生まれた、印刷発注に慣れていない層に向けた「おまかせできる冊子印刷」をオープン。既存のサービスで対応出来ていないところに目を向けることが、新しいサービスの開発につながった。

新商品や新サービスの開発には、知識やノウハウを備えた人材を育成するのと同時に、社内にその仕組みをどう整えるかが課題になってくる。研修に参加した社員が中心となって新サービスの開発を推進するだけでなく、学んだメソッドを他の社員とも共有し、ノウハウを社内に蓄積しながら事業開発を担う人材を育む仕組みづくりにもつながっていくのではないだろうか。

「印刷ビジネス開発実践講座」は、今年度も10月より開講する予定だが、メソッドの内容を具体的に知りたい方のために、プレセミナーを開催する。開発プロセスのポイント解説とともに、2018年に実際に講座を受講し、新サービスを立ち上げた参加企業による実践事例を公開する。新サービス開発の過程とともに、社内へメソッドを浸透させるための取り組みについても伺う。
将来に向けて、自社の既存サービスを見直したいと考えている方、新ビジネスの発案を考えている方におすすめしたい。

(JAGAT CS部 原淳子)

■関連情報
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