工程管理をするために必要な要素

掲載日:2015年2月17日

クライアントからの短納期要望は強まるばかりで、工程管理においてもとにかく納期優先で作業が進むことが多い。とはいえ受注単価が下落している昨今、利益を出すためには予定通りに作るだけでなく、いかに効率良く作るかが大きなテーマとなる。
イントラネットの普及などにより、工程や部門をまたがって進ちょく情報を共有する仕組みを比較的容易に構築できるようになった。これにより工務部門の負荷はかなり軽減されるものの、製作プロセスそのものの効率化には結びつきにくい。

効率を改善していくためには、まず現状の効率を評価する仕組みが必要となるが、実際問題として非常に難しい。特にプリプレス部門では、入稿形態が多様化し、かつデジタルデータでの入稿が急増していることやデザイン要素の高い仕事があるなど、さまざまな要素が絡み合って一筋縄ではいかない。

こうした問題があることを踏まえた上で、一歩でも二歩でも前に進むために、従来ベテランんの工務担当者は、どのようなことを考慮しながら日程計画、工程管理をしていたのか基本に立ち返りながら整理したい。
ポイントは各社ごとの標準仕様手順書や標準工数の設定であり、特に業務管理システム更新時には、こうしたことを念頭においた仕様設計が求められるのではないか。

ベテランの工務担当者が豊富な経験と知識をもとに半ば無意識のうちに行っている作業を要素ごとに分解してみると、ある仕事を受注したときに、どのように工程を組み立てて現場に指示しようかと考えるときには、仕様設計と手順計画、工数計画と日程計画の4つが基準となっているようだ。

仕様設計
仕様設計とはクライアントの要望を基に製品仕様を決定することである。納期、部数、原稿の内容や仕上がりサイズ、製本様式、用紙の種類などクライアントが決定する、あるいは営業がクライアントの意図を汲み取りながら製造適性などを考慮して決定するものである。

手順計画
手順計画とは、最短時間で最も経済的に製品を作るために工程、機械、材料を選択して工程手順を決定することである。使用する印刷機、面つけ、出力機(CTP or フィルムセッタ)、校正手段(カラープリンタ or DDCP or 本機)等々を決定する。本来であれば、標準仕様手順書(標準工程手順書)を作成し、製品仕様ごとに手順が標準化されていることが望ましいが、実際には納期が優先され空いている工程、機械に仕事を押しこむことが多いようだ。

工数計画
手順計画の次に工数計算を行う。手順計画によって決められた工程、機械設備選定結果にしたがって、各工程、機械設備の所要時間を算定する。これも長年の経験に基づいて感覚的に算出することが多いが、本来は工程・仕様ごとの標準工数(作業時間)を明確に設定しておきたい。標準手順と標準工数が明確になっていれば、現場の負荷状況の把握や原価管理が容易となるし、将来的にCIMを実現するためには必要不可欠の条件となる。

日程計画
日程計画とは、所定の期日までに所定の数量を生産するために、作業及び人に関連する業務の手配時期を決める計画である。
工数計算がどれだけという絶対時間を問題にするのに対して、日程計画では各工程ごとの生産開始(着手)、完了時点という相対的な時間を問題とする。
日程計画は、(1)基準日程の決定、(2)各工程の負荷調整、(3)作業予定表の作成という手順で行われる。

(1)基準日程の決定
手順計画、工数計画によって各工程での所要時間(負荷量)が算定されたが、実際に作業に移ったとき、これらの作業時間内に作業完了するとは限らない。工程または作業の中には、いくつかの先行作業が終わってからでなければ開始できない作業もある。すなわち、作業の干渉や順序によって生ずる待時間、停滞時間などの余裕時間を加味する必要がある。この余裕の時間と所要時間とを合わせた時間を基準日程という。各工程の「個別基準日程」を工程順に組み合わせたものが「総合基準日程」である。

(2)各工程の負荷調整
各工程の負荷調整をする方法のひとつに山積み法がある。手順としては、まず各工程ごとの基準日程(個別基準日程)をもとに入稿日に近い日から各工程の作業日を割り付けていく。このとき、各工程での基準能力を超える場合には、次に近い日に割り付けを行う。そして、クライアントの希望納期に間に合わない仕事の場合、納期を基準として逆に山積みしていき調整する。社内で対応できない場合は外注活用も考慮する。

(3)作業予定表の作成
以上で一つの仕事について各工程での作業日が決定されるが、これを基に各種手配の手順、日時を含め生産予定表としてまとめる。

作業指示と進ちょく管理
これらの計画がなされた後、現場に作業指示を行い、作業が開始された後は、日程計画で指示された予定通りに作業の進行が行われるように、常に作業の進行状況を把握し作業の遅速を調整する。現状の工務の業務は、進ちょく管理に多くの時間が割かれている。これについては前述のように、情報技術の活用によりかなりの省力化ができそうである。

その次に進むためには「標準化」がひとつのキーワードであり、仕様設計、手順計画、工数計画のプロセスの見直しと、これらを行うための標準仕様手順書や標準工数の更新・再整理というのは意義があるだろう。究極の効率向上である自動化にしても標準化が前提となるのはいうまでもない。

(JAGAT CS部 花房賢)