印刷会社における地域活性ビジネスの現状(2)

掲載日:2015年3月2日

印刷業における地域活性ビジネスへの取り組み体制や仕事の増減、収入の内訳などの実態についてJAGAT『印刷会社と地域活性vol.2』レポートの中から内容を一部紹介する。~JAGAT「印刷会社と地域活性vol.2」レポートより(2)

別団体と協力して地域活性に取り組む印刷会社が増加
地域活性ビジネスへの取り組み体制を聞いた設問では、「別団体(JC、商工会議所など)」が55.7%と最多回答になった。次点は「自社のみ」(51.9%)であることから、地域活性に取り組む際は、「他団体と協力する」「自社のみで取り組む」会社が約半数ずつ、と捉えることができる。
前回調査(2012年末)は、「自社のみ」「別団体」という順になっていたことから、最近では地域の活性化を果たすため、地域内で互いにの得意分野を生かしあえる協力体制を築き、取り組む例が増えている。

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ただ、「最も力を入れている取り組み体制」を聞くと、「自社のみ」(32.1%)が最多回答、次いで「別団体(JC、商況会議所など)(29.3%)となった。大きな差ではないが、他団体と協力して地域活性に取り組みつつも、最終的には社内にノウハウ・コンテンツを蓄積することを重視する企業が多いと考えられる。

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各社の取り組み人員数を聞いた設問では、1,2名から30名と回答社によるばらつきが大きい。詳細を見ると、最多は「1~3名」の35.6%、次いで「4~6名」の28.8%と少人数で取り組む会社が全体の65%になった。ただし、事業に関わる平均人数は6.3人となっていることから、ある程度の規模で地域活性に取り組む会社が増えている。

 

現在は制作、将来的には企画まで
以下の図では、現在の地域活性ビジネスの収入内訳について上位3つを聞いている。最も多いのは、「各種制作費」(59.2%)、次いで「自己資金(持ち出し)」(38.2%)、「広告費」(36.8%)、「各種販売費(書籍、グッズなど)」(32.9%)となっている。現時点では、企画などいわゆる川上の仕事よりも各種制作や、その物販などで地域ビジネスに参加、モノを作って売り、広告費を頂き、自己資金も投下しながら地域ビジネスを育てている企業が多い。

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今後望む収入内訳では、「企画費」の構成比が61.1%と最も高く、次点は「各種制作費」(48.6%)となった。

 

今後取り組みたいのは「地域ブランディング」
今後の取り組みとして最も人気が高かったのは「地域ブランディング」(54.5%)で、半数以上の回答を集めた。次点は「観光イベント」(44.2%)、「観光支援ビジネス」(42.9%)と、地域の魅力を発掘・ブランド化し、誘客ビジネスによって地域の活性化を目指す企業が多い。2013年の訪日観光客が1000万人を突破、ますます盛り上がるインバウンド関連ビジネスや、観光庁が提唱する体験・滞在型の「ニューツーリズム」における成功事例が目立ち始めたことも影響しているだろう。

今回の記事では、アンケート中から一部項目を抜粋してお伝えしているが、2012年末、2014年夏と2回の調査結果を比較、全項目について詳細を見ていくと、印刷会社の地域活性ビジネスにおける役割が「モノづくり専任」から「モノ・コトづくり担当」へと緩やかに変化、新しいネットワークや印刷需要を生み、実務を通した人材育成が少しずつ実現されていることがわかる。
今後もアンケート項目の見直し、拡充を続けながら、印刷会社における地域活性ビジネスのあり方を模索していきたい。

(研究調査部 小林織恵)

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