新入社員の意欲を引き出すミドルマネージャーの育成が急務

掲載日:2019年9月6日

文部科学省と厚生労働省によると、2019年春に卒業した大学生の就職率は97.6%だった(4月1日時点)。1997年の調査開始以来2番目の高水準となった。景気拡大と企業の採用意欲を背景に売り手市場が続いており、2020年春卒の就職戦線も学生優位で進んでいるようだ。人材確保が難しい環境の中で、印刷業界を志望してきた新入社員はどのようなことを考えて入社したのだろうか。

 

■出世欲が少ない新入社員
「伸ばしたい能力・スキルは何か」の問いには「コミュニケーション能力」が31%でダントツであった。次に「技術力」「企画力・発想力」がそれぞれ19%となった。しかし、「リーダーシップ」と答えた人がわずか5%ということだ。これと関連した問いで「将来、経営幹部、管理職へ昇進したいか」では62%の人が「いいえ」と答えている。その理由は「昇進に関心がない」「責任ある立場を望まない」「専門分野のエキスパートを目指す」という回答だった。
印刷会社に第一志望で入社し、学生時代に身に付けた知識を生かし、残業も会社の命令であれば受け入れ、長く勤めたいという真面目な人が多いが、入社後は責任を持って周りと協調して仕事をしても、先頭に立って組織を引っ張っていこうという意欲を持つ人が少ないという実態が調査から浮かんでくる。

■企業は優秀な幹部及びミドル層の育成が急務
一方、リクルートマネジメントソリューションズの人材マネジメント実態調査によると、組織・人材マネジメントの問題として、「次世代の経営を担う人材が育っていない(82.7%)」が8割を超えた。次いで「ミドルマネジメント層の負担が過重になっている(78.4%)」が続き、若手人材の早期戦力化によるミドルマネジメントの負担減とミドルマネージャーを経営幹部へ育成することが課題となる。

つまり、企業は経営幹部、ミドルマネージャーの育成が急務の課題であるが、若手社員がマネジメント層への昇進意欲が低い乖離が生じている。会社として採用した新入社員が真面目に協調性を持って長く働いてもらうことはもちろんだが、そのなかで将来組織を背負って立てる人材を育成しなければ将来は無い。そのためには、マネジメント層へ進むことの意義や面白さ憧れを見せていく必要があり、マネジメント層と一般の待遇面の差はもちろん、仕事の範囲、権限があることでできる、新たな挑戦やイノベーションによる遣り甲斐を、マネジメント層自らが感じて部下や後輩へ伝えていく必要がある。

働き方改革の名の元、企業は残業削減、ワークライフバランスを推進していく必要があり、マネジメント層の負荷は益々高まる。その一方、マネジメント層の役割は益々高まり、企業内における重要度は高まる。企業は経営幹部、ミドルマネージャーの育成し、やりがいを与えることでモチベーションを高めることが急務である。結果として、その背中を見た若手社員が成長意欲を持つことで、「将来、経営幹部、管理職へ昇進したいか」では62%の人が「いいえ」と答えたアンケートを「はい」に変わる時代になれば良い。

CS部 塚本 直樹

●JAGATは次世代の印刷経営幹部の育成機会として、ミドルマネージャーを対象にした経営幹部ゼミナールを9月にリニューアル開講
第36期印刷経営幹部ゼミナール