これからは顧客体験が重要になる

掲載日:2019年10月3日

8月に開催した「JAGAT Summer Fes2019」では、2つの講演でDigital transformation(DX)がキーワードになった。DXはこの2~3年、よく目にするようになった。「DX」は、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱した概念で、「進化し続けるテクノロジーが人々の生活を豊かにしていく」ということである。

これだけではなかなか具体的にイメージしにくいが、デジタル技術やIT技術によってより便利に、豊かになっていくということでは、実際に日々の暮らしの中で実感しているのではないだろうか。

JAGATの夏フェスでは、アドビシステムズの租谷考克氏は、同社が顧客体験マネジメントを通じてDXに取り組んだ事例を紹介した。

印刷業界にとっては欠かせないDTPツールであるアドビのパブリッシング用アプリケーションソフトウェアは、かつてパッケージソフトとして個別に販売されていた。しかし、今は統合プラットフォームとなってクラウドへ移行した。結果、バージョンアップが従来の1~1年半の間隔から毎月ように新しい機能を提供できるようになった。

さらに常にクラウドとつながった状態で顧客が使うために、途中で作業がスタックするようなものや、あまり使ってもらえない機能があれば、すぐにサービスの改善につなげられるようになった。

当然、これは顧客側にとってもメリットで、まさに顧客が体験したことが、顧客にとっての利便性の向上に生かさていくのである。これがDXの一つの例になる。

また、デジタル時代のB2Bマーケティングに関して講演いただいた横河電機の阿部剛士氏も、ITリテラシーの高い若い人たちは6割以上の消費者は、価格よりもカスターエクスペリエンスを優先しているとして、やはり顧客体験の要性を強調した。

こういったことの表れの一つは、消費が自己表現の一つになってきたということがある。つまり、例えば購入した商品やサービスをインスタグラムにアップし、それに対して共感してもらいたいということがある。自分以外の人にどう思われたいのかが消費行動の核になっていく可能性がある。消費が自分のブランド、自己表現になるということである。

そういった消費者の変化に企業は対応しなければならず、そのためにも(デジタル)マーケティングは重要になるということだろう。

租谷氏は、DXが重要になっているのは、「デジタル社会が進展して消費者・生活者の意識や行動が変わってきて、それに企業もあわせていかければならないからだ」という。

印刷会社にとってもDXは他人事ではない。クライアント企業がDXに取り組むとき、印刷会社はどのようにクライアントに向き合うのか、あるいは印刷ビジネスそのものを変革していくのかが問われることになる。

JAGAT info10月号では、JAGAT夏フェス2019の報告としてアドビシステムズの租谷考克氏と横河電機の阿部剛士氏の講演内容を紹介する予定です。ぜひ、ご一読してください。

(JAGAT info編集部)