製造業の形態には、受注生産と見込み生産の2種類がある。これら生産方法の違いを認識することで、その特徴や行程の要素について、より理解が深まる。われわれ印刷業界に多い受注生産を、あらためて考えてみたい。
受注生産の特徴、メリット
受注生産方式は注文を受けてから製造、出荷、納品する形態である。私がよく使う、いわゆるオーダーメイドだ。一般的に連続生産や大量生産に対し、少量の生産になることが多い。たとえば、造船や特殊産業機械など発注(購入)者のためだけに製造する場合は、必ず受注生産になる。一方、住宅は建売と注文建築の2通りあるので、受注生産のみとはいえない。また、受注生産は繰返受注生産と個別受注生産の2つに分けられる。
受注生産方式における供給側のメリットは主に次の3つある。
まず、個別製品(仕様)に対応できるという点だ。受注生産は既製品とは異なり、基本的にユニークなものを作るための生産方法である。よって、生産工程もニーズに合わせて変更できるので、オリジナル商品を作ることが可能である。
2つ目は、在庫を持つ必要がないという点だ。受注生産方式は注文を受けてから生産を開始するため、原則として商品在庫は発生しない。事業を行う上で在庫を抱えなくて済むということは、たいへん大きなメリットである。
3つ目は、商品の売り切れ、売れ残りのリスクがないということである。受注後に生産開始ということは、売った後に相応の商品を用意するということだ。言い換えれば、既に売れたものを作るため売れ切れ、売れ残りのリスクはない。
差別化による価格戦略
価格戦略とは、マーケティングの主要要素4P(Product、Price、Place、Promotion)のなかの1つの戦略を指す。マーケティングにとって重要要素であることは明らかだ。高すぎる価格を設定すれば商品は売れず、低すぎれば利益が得られなくなる。なんとも難しい数値である。
国内の市場環境をみると、日本企業の強みは、シェア重視の低価格戦略だ。われわれ印刷業界もこの低価格に陥りやすい業界の1つに違いない。しかし、一般的にこの戦略は、国際競争力の源泉にならない場合が多く、むしろ低収益を生む原因になっている。なぜなら、開発途上国の技術が向上し、日本と遜色ない品質をより低価格で提供できる国が増えたからである。また、シェア重視であればプラットフォーム企業のように、無料という究極の戦略をとる企業もあるほどだ。
この低価格競争から抜け出すためには、高付加価値の製品を作り出し、その結果高い価格を設定することだ。一般的には、同質同レベルでは厳しい価格競争を起こすため、できるだけ製品の差別化を図り、他社との価格競争を避けることが、高収益を上げるうえで重要とされる。電化製品などであれば、デザインや配色などで差別化し、他社との違いを強調する戦略もある。しかし、印刷業界は、そういった差別化ができないので、違った切り口の差別化が必要になる。
また、効率化に向かうことだけが生産性向上の方法ではない。今後たいせつなのは、一定レベルの品質をいつでも安く提供するのではなく、質の高いサービスを提供し、それに見合った対価を得ることである。印刷業でいえば、印刷品質だけではなく、営業(対応)品質、提案品質、データ管理、校正のやり取り品質、納品品質など工夫できるかもしれない。それによって、利益や賃金向上を高めることが目標になる。実現には日頃より考え、そして考え抜くことが重要であり、社内にそのような人材が何人いるかが企業の将来を左右する。
(西部支社長 大沢昭博)
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