『印刷白書2019』発刊のご挨拶

掲載日:2019年10月25日

2019年10月23日発刊の『印刷白書2019』について、会長塚田司郎よりご挨拶させていただきます。

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今年は、国内では年初の製紙メーカーの生産工場での事故と、その後の機械停止を伴う生産調整による用紙の値上げに始まり、輸入原材料のコスト上昇によるインキの値上げなど、主要な資材コストの上昇があり、紙メディアに関連するビジネスは難しくなってきました。また、世界では米中間の貿易戦争、悪化する日韓関係、目前に迫っているイギリスのEU からの離脱など、不安定な状況はますますエスカレートしています。経済面では、各国の利下げ競争が強まり、わが国においても日銀がこれ以上マイナス金利を深掘りするのかなどの議論が盛んですが、一方では資金の貸し手である銀行の自己資本規制の心配もあり、やがて融資に影響するのではないかとの懸念も生まれつつあります。10月からは消費増税も実施されました。

この10 年で印刷産業の企業数は1 万社減って2万2000社となりました。産業のピークだった30年前の半数です。リーマンショック後の世界では企業は製品やサービスのプロモーションにROIを重視するようになり、スマートフォンの登場以降は、デジタルメディアは年々進化して、人々がそうしたメディアに接触する時間が増え、結果として紙メディアは減少してきました。現代では、DMのような紙メディアからQRコードでスマホやPCのサイトに導き、ユーザーとコミュニケーションを取る企業が増えてきました。こうしたニーズにはマーケティングに対する理解も不可欠ですが、それとともにバリアブルプリントの技術で印刷物のパーソナライゼーションを可能にしなければなりません。JAGATでもそれを「デジタル×紙×マーケティング」と称して、昨年に引き続き研究し、事例の紹介に努めてきました。

時代の変化、デジタル技術の変化とともに、単に紙にインクを乗せていた姿からビジネスの目的や業態も変わっていきます。もちろん、オフセット印刷の生産性向上についても継続し努力しなければなりませんが、コモディティプリントは減少しているので、デジタルメディアとつながり、紙メディアの価値を高めることにも留意する必要があります。変化する社会のニーズに対して適応できる人材の育成は重要な経営課題の一つです。今年の印刷白書が各企業の皆様にとって、変化の方向性について考える際の参考となることを願っています。

2019年10月
公益社団法人日本印刷技術協会
会長 塚田司郎

書籍発刊のお知らせ

『印刷白書2019』2019年10月23日発刊