印刷オペレーターが印刷機や現場の環境からインキ、用紙、湿し水などの材料まで正確な知識を持つことで、トラブル発生における迅速な対応や防止ができる。
●コスト削減のためのトラブル対策
生産調整による用紙の値上げや、輸入原材料のコスト上昇によるインキの値上げなど、資材コストの上昇にともない、印刷現場の改善によるコスト削減が重要になる。
印刷トラブル発生による、資材のロスや本来必要のない残業による労務費がかかり製造費用が上昇する。印刷製造コストの構造として用紙等の資材や労務費が大きなウエイトを占めるため、トラブルが発生したら迅速な解決や予防保全ができれば、ムダなコストを削減することができる。
オフセット印刷は印刷機のメンテナンスの不足や、インキ、用紙、湿し水などの材料を適切に使用できないとトラブルが生じやすい。材料を原因としたトラブルも多く、例えば「ピッキング」の原因は紙の表面強度不足・インキのタック値が高い・印圧が高い、「地汚れ」の原因は湿し水の量やインキのph値が不適切・インキの乳化・機械の調整不足、よくある「乾燥不良」の原因は水負けによるインキの過剰乳化や湿し水に印刷用紙の成分が溶出しph変動することなど、その原因は多様にある。
●材料の性質と特長の正確な理解が大切
そこで必要なのは印刷オペレーターが、材料に関する性質や特長などの基本的な知識を正確にもつことだ。そうすれば、トラブルが発生してもインキのタック値やエッチ液の調整、どの助剤をどれだけインキへ添加したらいいかなど多方面に応用ができる。熟練オペレーターの減少と若手オペレーターへ技術が継承できていなくトラブルが増えているともいわれている。印刷機の構造的な仕組みとともに材料について体系的な知識をもって機能を理解し、現場の標準印刷の体制が確立されていれば、トラブルが起きても速やかに対応できるようになる。
さらに、定期的に現場の勉強会を開催してその間に合ったトラブルやクレーム、営業からの要望などを議題にあげて、その原因や対処方法を報告し議論する。そうすれば現場の今の問題点も共有でき、オペレーターにとっては同じトラブルを起こさないよう注意をしながら作業できるという相乗効果も期待できる。
JAGATでは、印刷オペレーターのための技術セミナー「品質向上のための印刷材料知識」を開催する。ここでは印刷品質に影響を及ぼす印刷材料(インキ・用紙・湿し水)に焦点をあて、印刷用紙(種類と印刷適性)、インキの性質、湿し水(望まれる性質と添加剤)の材料知識を再確認して印刷材料に関連するトラブル事例を紹介する。
普段の作業の中で材料に関する疑問をもっている方、材料の知識をもっと深めたい方など、是非ご聴講ください。
(CS部 伊藤禎昭)
「品質向上のための印刷材料知識」
開催日:2019年11月9日(土)10:00~17:00
場所:JAGATセミナールーム 東京都杉並区和田1-29-11