【マスター郡司のキーワード解説2020】リチウムイオンバッテリー

掲載日:2020年1月30日

今回は「リチウムイオンバッテリー(ポケベル)」について考える。

JAGAT 専務理事 郡司 秀明

リチウムイオンバッテリー(ポケベル)

ポケベルサービスが9月いっぱいで終了(東京テレメッセージ)して、秋葉原でポケベル葬が行われるなどして話題になった。今回のキーワードは閑話休題的にポケベルについて述べてみようかと思ったのだが、いまさらポケベルがキーワードというわけにもいかない。そこに、今回のノーベル化学賞受賞者が吉野彰氏に決定したことを受けて、その受賞理由も「リチウムイオン電池開発」なので、ますますテーマについて悩むことになってしまった。どうせ閑話休題なら、ポケベルからリチウムイオン電池までの携帯端末周りの話を茶飲み話的に述べてみたい。

「さて、年齢構成の高い印刷業界でもさすがにポケベルを使っていた人は、そう多くないはずだ。私は会社から持たされていた人間の一人なのだが、用があるのは知らせてくれるのだが、返信できないので、公衆電話を探して相手先へ電話するのだ。当時は普通だと思っていたが、今の若い人と話してもまったく意味が通じないと思う。ATMの長い行列に並んでいて、あと3人くらいになった時に限ってポケベルがなって、無視していると何回もしつこくポケベルが鳴って、連絡すると急ぎでもない用事だったということが、ほとんどだったと思う。行列でポケベルが鳴ると、一緒に待っていた人達から「私もよくあるんですよ」とうれしそうに言われたものだ(他人の不幸、特にこの程度は一番楽しいもの)。

私の持たされていたポケベルは、電話番号提示や数字の提示ができたので、4649(ヨロシク)、0840(オハヨウ)、090(オクレル)などはよく使っていた。若者は何でも遊びに変えてしまうが、1410(アイシテル)などはその代表である。1996年のポケベル契約者数のピークだった頃は、ポケベルサービスが安価になったので、特に高校生中心にポケベルでのコミュニケーションが流行っていたと思う。

下にポケベルの簡略史を掲載してあるが、ピークを過ぎた後半には漢字サービスや携帯電話との一体型も提供されるが、必要性には疑問符が付くものも多かった。

ポケベルと共に流行ったのがモバイル端末(PDA=Personal Digital Assistantのことだが、ペプシコーラからやってきてAppleのCEOになったジョン・スカリーが言い出したといわれている)時代を経て、スマホまで発展していくのだが、携帯端末と言っても通信機能が貧弱で電話回線しかなかったから、モデム経由で通信するのが結構大変だった。今は死語になってしまったISDN公衆電話(今でも目にするグレーの大型の公衆電話機がコレ。電話は基本的にアナログなのだが、ISDNはデジタル通信だった。モデムはデジタルデータをD/A変換してアナログデータで送っていた)に、ISDNジャックを繋げたときなどは通信速度の速さに感動したものだ。その頃の主流はモデムだったし、それ以前の携帯モデムもない頃は、電話の受話器に音声カップラーを付けて音で通信していたのだから、ISDNでも十分素晴らしかったのだ。

このように携帯端末は昔からあったのだが、私のようなオタクは新しいPDAが出ると飛びついて買ったものだ。NewtonはAppleのPDAだが、非常に良くはできていたが、日の目を見るのはiPodまで待つしかなかった。そしてiPhoneで花開いたわけである。iPhoneはリンゴと関係ないが、もともとAppleの製品名は徹底的にリンゴにこだわっており、Macの語源になったMacintoshはリンゴの一般的な品種名だ。Appleのゲーム機はPippin@というが、青リンゴの品種名だ。Newtonはイギリスの有名な物理学者だが、リンゴの実が落ちるのを見て「万有引力」を発見したのは有名な話だ。私はNewtonも持っていたが、シャープの誇るPDA「ZAURUS」も数台持っていた。シャープは、ポケコン(携帯タイプのコンピューターで、自分でプログラムを組込んで使用する。私は現像液の補充プログラム等を作成して使っていた)等を作っていた経験が豊富で、ZAURUSも良いPDAだった(この頃の日本の家電メーカーは夢があったし、良い製品を作っていた)。

しかし、PDAは皆電池の問題があったので、端末用の外部バッテリーが準備されていた。携帯電話が普及したのも高性能小型バッテリーが進歩したおかげなのだが、かつては携帯電話とは言っても非常に重いものだった。その重さのほとんどはバッテリーが占めていたのだ。ということで、リチウムイオンバッテリーとモバイルの未来については次回に続けさせていただこうと思う。

(JAGAT専務理事 郡司 秀明)
(会報誌『JAGAT info』 2019年11月号より抜粋)