JAGAT大会2019(2019年10月23日開催)では、ファミリーレストランという言葉を生んだ「すかいらーく」の創業者横川 竟氏が特別講演を行った。横川氏といえば「すかいらーく」で大成功を収めながら、後年は業績不振に陥り、経営の第一線を追われた不運の経営者という印象があるのではないだろうか。ところが、75歳で高倉町珈琲の1号店を出店、翌年には株式会社化して82歳の現在も高倉町珈琲代表取締役会長として活躍する現役バリバリの経営者である。講演では60年の商売と経営の経験で得た、業種に関係ない商売・経営の原則を披露していただいた。
横川氏はいずれ独立して商売したいという思いで17歳のときに築地で働きだした。24歳のとき、兄弟4人でことぶき食品を創業している。横川氏が商売の基本を覚えたのは築地の4年間で、そこで商売とは何か、どうしたら物が売れるか、そのための価値づくり、どうやったら成功するかを学んだ。大学にいっていない横川氏は、築地で働いた4年は商売を教えてもらった築地大学だったと語る。
お客さんの喜ぶことをする
人様の役に立つことをすることが商売の基本で、売れて喜ばれて儲かるということは、お客さんのためになることだ。
商売の価値づくりとは
商売と経営は分けるべきで、商売とは価値づくりで、経営はそこで儲けたお金をどう使うかということである。横川氏が「すかいらーく」を創業したときに、「明るい店にしよう、きれいな店にしよう、それから楽しくしよう」と思い、どうしたら楽しくなるかと考えて作ったのがファミリーレストランという形態である。このとき考えた「楽しい店」とは、明るくて親切で、誰でも払える値段のレストランである。当時は庶民にとってはレストランは敷居が高く、何か特別の日に行くお店で、普段お腹を満たすのは食堂であった。
ガラス張りの店舗で写真入りメニューは日本で初めて「すかいらーく」が作った。障害のある方のためにスロープも作り、ビニールの傘袋も「すかいらーく」が初めて作った。これらも価値づくりの一つであり、横川氏は不便なことを便利にすることが大事で、我々の身の回りにもそんなことがたくさんあるはずだと指摘する。
また、夕張の農家の庭先に放置されて、そのままでは腐っていくだけの完熟した黄色いメロンを見つけた横川氏は、そのメロン空輸してお店で夕張メロンと名付けて提供しヒット商品にした。当時は青くないと売れないため完熟メロンは棄てられており、一見して商品にならないように見えるものも、価値を生み出す工夫をすることでヒット商品にした。
事業継承は経営思想の継承がカギ
横川氏は「すかいらーく」が業績不振になった一つに、後継者に会社経営の思想を教えていなかったことがあるとする。後継者教育では企業思想を受け継つがせることが重要である。
商売に定年はない
築地で教えてもらった商売の原点に「いつも新鮮、いつも親切」ということがある。ここでいう「いつも新鮮」とは、商品の新鮮さだけではなくて、働く人の心の新鮮さという意味も大きい。年齢は商売という目で見たら無関係で、頭を若くして考えていかなければならない。心が歳を取ることをやめることだという。だから、心がいつも新鮮さを保てれば、商売に定年なしということである。
なお、JAGAT info2月号ではJAGAT大会2019横川氏の講演の模様を6ページにわたって、たっぷりと紹介する予定である。( JAGAT info編集担当)