“働き方改革”は経営にとってボトルネックなのか ~生産性向上と働き方改革、雇用に波及する多能工化への取り組み

掲載日:2020年1月27日

地域イベントでお目にかかったある印刷会社の経営者の方が「印刷需要の減少、材料の値上げ、価格競争に加えて働き方改革でもう四重苦だよ」とおっしゃる。たしかにワークライフバランスなどと言って、時短や残業カット、有給休暇消化を迫られても、単純にそれだけでは現状の利益の確保ですら難しいであろう。

2019年4月より順次施行された働き方改革関連法に基づき、印刷会社も対応が求められているが、働き方改革が経営のボトルネックになってしまっては、推進していくことはできないであろう。
会社、社員双方にとって利益ある改革のためには、なんといっても業務の効率化を図らなければならず、そのためには、仕事の標準化や共有化が重要であり、その仕組みを構築する必要がある。
ここでは印刷会社の生産部門の改革として最近よく耳にする多能工化について注目してみたい。

「多能工とは生産・施工の現場において、1人が一つの職務だけを受け持つ単能工に対し、1人で複数の異なる作業や工程を遂行する技能を身につけた作業者のことをいう。多品種少量生産や品種・数量の変動に対応しうる柔軟な生産体制を維持し、生産性の向上を実現するためには多能工の確保が欠かせません。」(日本の人事部より)

実際に多能工化に取り組み、CTP出力機のオペレーターが印刷のサポートをし、逆に印刷機のオペレーターがCTP出力機を操作できるようになって仕事の幅を広げている例がある。製本関連でも断裁機、折り機、無線綴じ機、中綴じ機など製本機器の操作に加え、印刷機やCTP出力機のオペレーターが携わり後工程の技能を習得している例もある。

多能工化を進めるにあたっては、経営者が考慮しないといけない課題がある。例えば、時間がかかることだ。OJT、OFF-JTで実務の経験を多く積ませながら教育しなければならない。
また、多能工化に取り組んでいる間に、評価制度が伴わないなどにより、社員のモチベーションが低下してしまうことを防ぐ必要がある。大事なのは社員とコミュニケーションを取りながら進めていくことだ。トップダウンで一方的に命令するだけでなく、彼らの身になって意見を聴き、会社の体質に合った改革を進めていくべきである。

ただし、一概に印刷工場の多能化といっても、印刷会社の規模や事業領域によって、取り組み方も様々である。そこでJAGATでは、page2020で働き方改革をテーマにしたセミナーを開催し、実際の取り組みにおける具体的な事例をもとに、多能工化による働き方改革の成功への道筋を示したいと考えている。
「4S」「機械設備の保全」「品質」「多能化」のー連の活動の中、多能工化を位置づけし、職場環境が人材育成と製品の品質にも結びついている例。さらに、徹底した「見える化」への取り組みにより、コスト意識を高め、目標管理を行い、効率的に仕事を進めるしくみづくりをしている例など、業務管理システムの構築を通じ、生産性向上の中での複数の工程をカバーした多能工化について紹介する。

(CS部 伊藤禎昭)

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