情報サービス産業としての印刷物

掲載日:2020年1月27日

「デジタル印刷機を使う印刷ビジネスというのは情報サービス産業だ!」にフォーカスしたpage2020カンファレンスについて紹介。

page2020の話題も盛り上がってきて、会社としてカンファレンス・セミナーに複数申し込まれる会社も最終的な調整段階に入っていると思う。いつものグラフィックセッションのG1は、デジタル印刷の成功事例紹介をメインにおいているのだが、今回は「デジタル印刷機を使う印刷ビジネスというのは情報サービス産業だ!」にフォーカスしたい。

今回のスピーカーは三人で、まずは共進ペイパー&パッケージの鍛治川和広常務だ。共進さんは、鍛治川常務が中心になってハコプレ事業を運営しているのだが、これまで共進さんが培ってきたパッケージビジネスとは一線を画した「Hacoplay」サイトを運営している。共進さんは、これまで厚紙のオフセット印刷で独自ノウハウを築き上げてきたと思うのだが、アッサリWeb to Pac(共進さんはPrintとは言わない)ビジネスに方針転換してしまったということだ。共進ペイパー&パッケージさんのすごいところは今までのビジネスを捨てること無く、共存させているところである。一見すると単なる印刷通販風にも見えるのだが、目指すところはパッケージや紙包装、紙バッグ、POPという最後まで残る情報メディアを包括したサービス産業になろうとしていることである。

二番目のユニバーサルポストは喜瀬社長の強い思いがあり、「このまま受け身の印刷ビジネスをやっていても未来は無い」との判断から、連帳のインクジェット機を導入したのだが、まずは印刷自前メディアの整備、ユニバーサルポストではフリーマガジンやイベントチラシ(パンフ)を充実させている(現在もやっているのだが、より強化しようとしている)。ウジウジ考えてばかりでは始まらないと、ABテスト等をバンバン打って反応を見て、バンバン直していくというのがデジタル印刷ならではのことなので、これを実践しようとしている。Webと同じ最新の情報が紙で提供されるのだから、インパクトが無いわけはないのだ。印刷発注者だって前向きの取り組みに反対などするわけはない。意味のあることならお金は払いたいと思っているのが広告主である。その中心で動いているのが前田尚子取締役なのだが、実は喜瀬社長のお嬢さんでもある。前田取締役と若いスタッフで、新しいユニバーサルポストのビジネスを生み出すべく頑張っている。この辺の話を赤裸々に語っていただき議論したいと思っている。

三番目のスピーカーが「ねこのしっぽ」の荒巻喜光専務である。風貌も着流し姿で、なかなかインパクトがあるのだが、元々クリエイターで漫画を描いていて、「自分の作品の印刷を頼みに、印刷会社を訪問しても相手にされなかった経験」から、同様の経験をした現社長と印刷会社を興してしまったということである。なるべく印刷会社からほど遠い名前ということで「ねこのしっぽ」にしたらしい。創業当時は犬の勢力の方が優勢だったと思うのだが、この頃から猫に目をつけるとはセンスが違う。

いわゆる同人誌作家(いわゆるコミケマーケット)がお客さんなのだが、印刷を注文に来るクリエイターが欲しがるグッズやサービスをきめ細かく提供しているのだ。デジタル印刷なら折り帳等を考えなくても良いが、アナログ印刷もページの自由度を考えてペラ帳合い機を備えている。もちろんペラ帳合いならデジタル機にも使用できる。要するにコミケ市場で使用するPOP類から、飾るためのスタンド等々、イベントの案内状等々、必要なサービス全てを提供しているのだ。

最後に今回は冷静なコメンテーターとしてフォーム工連の山口実専務理事に参加いただき、デジタル印刷機を持ったときから、ビジネス自体が「印刷物制作」から「情報サービス産業」に変わるという持論を展開いただく予定である。情報サービス産業というキーワード決して心地良い響きだけでは無く、ビジネスとして大事なポイントになっている。

(JAGAT専務理事 郡司秀明)

■page2020カンファレンス

【G1】デジタル印刷ビジネスの実践