page2020では、100万人超を動員する瀬戸内国際芸術祭、富山県南砺市のアニメまちづくり事例、工場見学を生かした企業連携によるモノづくり革新など、地域接点の再構築と地域資源の再評価を通した企業成長のあり方、印刷会社の役割について考える。
地域と企業がともに成長するビジネスモデルとは
必要性の唱えられる地域活性化だが、収益の裏付けなくして持続的に取り組むことはできない。そこで、企業と地域の両方に同時に価値をもたらすCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)の考え方が選ばれる。自社を取り巻く環境(地域)に好影響を与えることで、その恩恵を受けて成長するマーケティング手法である。情報化と需要減少が同時に進む現代は、たとえ変化に対応しても、ほとんどの場合は競合相手の後手を踏む。つまり、自ら変化を作り出そうとする姿勢の有効性が高い。
工場など何気ない施設を生かして顧客を創る
似たビジネスモデルに「産業観光」がある。企業や工場を観光資源に活用して、地域ブランドと自社知名度を同時に向上させる。企業にとって工場はごくありふれたものだが、一般の生活者には非日常空間だ。ものづくりの音や匂い、普段は見られない部品や半製品、高額な産業機械、働く人とダイナミズム。1社でも良いが、地域の工場が協力する「地域一体型オープンファクトリー」ができれば、工業地帯が数日に数千人以上が押し寄せる顧客創造イベントの舞台になる。墨田区「スミファ」、台東区「モノマチ」などが知られる。
香川県の宿泊者数を10倍以上に増やした芸術祭
近年、政府は地方創生において「関係人口の創出」を重視する。定住人口でもなく、観光客数でもない、地域と長期的に関わりを持つ人をいう。地域に継続的な関心を持ち、人・物・情報など多面的な行き来を続ける関係と考えればよい。こうした取り組みの代表例に「瀬戸内国際芸術祭」がある。3年に一度、瀬戸内海に毎回100万人超を呼び込む。訪れるのは、観光客はもちろん外国人旅行者、アーティスト、ボランティア、移住者など多様な人々。香川県は2012年からの5年で延べ宿泊者数が10倍以上と全国一位の伸び率を記録した。
地域資源のストーリー化で自ら聖地を創生する
かつて瀬戸内海の島々は格好の隔離場所として、軍の実験場、不法投棄による汚染、ハンセン病の療養所など負の役割を押し付けられた。これをアートで彩り、交通宿泊インフラを整え、ブランディングしたのが「瀬戸芸」である。富山県南砺市は、アニメスタジオが地元を舞台に制作した作品を地域づくりに生かす循環が生まれてファンの聖地になった。ここまでの事例はすべて、いわゆる「聖地巡礼」のように幸運にも映画などのロケ地に選ばれたのではない。地域を自らの手で活性化する「聖地創生」の考え方によっている。
page2020では上述の事例をもとに下記カンファレンスを開く。(JAGAT 研究調査部 藤井建人)
2月7日(金)10:00~12:00
事業創造のオープンイノベーション
~『大廃業時代の町工場生き残り戦略』から~
2月7日(金)13:00~15:00
瀬戸内国際芸術祭に見る地域活性化
~広域連携とアートによる地域活性化はいかに可能になったのか~
2月7日(金)15:45~17:45
地域資源をストーリー化する「聖地創生」
~コンテンツツーリズムによるまちづくりの理論と事例~
■page2020セッション(計31本)2020年2月5日~7日 東京・池袋サンシャインシティ
基調講演(3本)
カンファレンス(12本)
セミナー (16本)
<関連書籍・レポート>
「印刷白書2019」
「みんなの印刷入門」
「JAGAT印刷産業経営動向調査2019」
「印刷会社と地域活性 Vol.3」
「デジタル印刷レポート2018-2019」
「地方創生/地域活性ビジネス」