【マスター郡司のキーワード解説2020】レンダリングインテント

掲載日:2020年3月30日

今回は「レンダリングインテント」について考える。

JAGAT 専務理事 郡司 秀明

レンダリングインテント

異なる色域を持つ各種デバイスで色を再現するために多くのレンダリング(レンダリングとはコンピューターで画像等を再現すること、カラーマネジメントでは色域を移して再現すること)方法が存在する。その中でも4つの重要なレンダリングインテント(インテントとは意図とか目的のことなので、カラーマネジメントでカラースペース間のカラー変換をどのように処理するかのルール)である「知覚的」「彩度」「相対的な色域を維持」「絶対的な色域を維持」がICCにより定義されている。

カラーマネジメントがいわれ出した頃は怪しい説も横行していたが、淘汰されたと思ったら、最近になっていろいろといわれ出している。レンダリングインテントによって、色の調整方法が異なる。例えば色が変換先の色域内に収まるときは色が変換されないが、狭い色域に変換するときは、元の視覚的なカラー関係を維持するために色が調整される。レンダリングインテントを選択した結果は、ドキュメントのグラフィックの内容やカラースペースの指定に使用しているプロファイルによって異なる。

現在のPhotoshop CC(バージョン21.0.2)のカラーマネジメントシステム、プルーフ、および印刷物のプリンター出力において、4つの内のいずれかのレンダリングインテントを選択することができるようになっている。

●知覚的

カラー値が変更された場合でも、人の目に色が自然に映るように、色間の視覚的な関係を保護する。このレンダリングインテントは、色域外の色が多く含まれる写真画像に最適だ。これは日本の印刷業界における標準のレンダリングインテントである(図1)。日本の印刷品質が世界的に見ても群を抜いて良かったし、調子再現という点で考えると知覚的がベストとされてきた。欧米でも新聞用には知覚的が採用されていて、小さいカラースペースに圧縮する場合には、知覚的ということなのだろう(図4)。

●彩度

色の正確さよりも、画像の鮮明な色を再現することを重視する。このレンダリングインテントは、色間の正確な関係よりも、明るい色使いが求められるグラフや図表など、オフィスで使用するグラフィックに最適である。かつてCG画像に最適といわれていたが、現在のCG画像は写真と同様に扱われるので適さない。

●相対的な色域を維持

変換元のカラースペースの最大ハイライトと、変換先のカラースペースの最大ハイライトを比較し、その差だけシフトして全ての色を変換する。色域から外れる色は、出力先のカラースペースで再現できる最も近い色に調整される。相対的は欧米の印刷業界における標準のレンダリングインテント(図1、2)だ。欧州では増感色素を含んだ紙が一般的になっていることや、調子再現より色優先という意識が強いのが理由ではないか?(郡司の個人的見解)。個人的には相対的のグリーン域の圧縮が気になるが、昔から製版品質にこだわる目には知覚的が馴染むと思う。

●絶対的な色域を維持

出力先の色域に収まる色は変更されないが、色域から外れる色はクリップされる。変換先の白点への色のシフトは行われないので、紙の影響も分かりやすい。色校正等を意識したレンダリングインテントともいえる。

相対的を押す人が多くなっているようだが、日本の標準は知覚的だ。Japan Color 2011のプロファイルがアドビ製ではなくX-rite製なので、相対的の方が色がきれいだというのは、分からなくもない(X-riteは色のマッピングポイントが異なる)。しかし、相対的は黒色点補正がないとシャドウがつぶれてしまって、比較以前のレベルだ。だからアドビソフト以外も含めて、基本は知覚的で問題ないと思う。Japan Color 2011のオススメ設定はアドビから提供されてはいないが、マニュアルで設定して使っていただきたい(図5)。

図2_プリプレス用北米2

図1_プリプレス用日本2

図3_プリプレス用ヨーロッパ3

図4_新聞用北米

図5_JapanColor2011(マニュアル設定)

(JAGAT専務理事 郡司 秀明)
(会報誌『JAGAT info』 2020年1月号より抜粋)