どうやったら社員に印刷に関連した基礎知識を習得させられるか、特に若手営業社員の育成方法について都内のある印刷会社の例を紹介する。
50年以上にわたり地元企業を中心に、サービスを展開している印刷企業がある。同社は、会社案内、カタログ、ポスターなど商業印刷の制作にあたり、デジタル印刷機を活用して少部数の仕事に対応しながら小回りの利く営業を展開している。目指すべき営業のスタイルは、顧客の期待を少しでも上回ることである。例えば、営業は印刷のプロフェショナルとしての自覚を持ち、印刷について顧客が理解できるように、を噛み砕いて説明できるような営業活動を心掛けている。そのためには、社員教育を計画的に行い、日々学習する機会を社員へ提供している。
営業は新卒から育成
数年前までは営業職の即戦力を求め中途採用が中心だった。しかし、社内の雰囲気に馴染めずに早期に離職をされるなど定着に課題があったため営業職の採用を中途から新卒へ方向転換を図った。社会人経験のない学生に企業理念の浸透から仕事の進め方まで0から教えた方が、人材の定着化に有効で長期的な視点で組織力を強化できると考えたからだ。
新卒営業職の早期戦力化を図るには人材育成が重要になる。先輩社員による自社ならではの営業スタイルを教育するだけではなく、印刷営業として必要な知識やスキルを体系的に学べる機会として外部の研修機関を利用している。JAGATの「印刷営業20日間集中ゼミ」もそのひとつだ。その後は6ヶ月間上司が付いてOJTを実施している。
営業の成長を促す「力量表」と「成長シート」
この会社では社員が学んだ知識やスキルを実務で効果的に生かせるように、「力量表」と「成長シート」という教育ツールを活用したコーチングにも力を入れている。「力量表」は、社員がどのような免許・資格、仕事に対する能力を持っているかをわかりやすく示した表であり、上司が必要に応じてコーチングして、人事部門でまとめている。
「成長シート」は、社員の成長を促進するためにキャリアプランと目標を明確化したものだ。このシートの運用には4段階ある。1番目に営業個人が5段階評定の目標の達成度合いを自ら評価し、2番目に同じ表を上司が独自に部下の目標達成度合いを評価する。そして3番目に社内で組織された評価委員会で差が生じた評価を検討する。最後に評価委員会の結果を基に上司、本人、評価委員、社長の4者で面談し、次年度の目標を決めながら社員の成長を促している。
勉強会の目的の明確化が大事
これらの取り組みにより、営業が自主的に勉強会を開催したり、営業同士が気軽に質問して教え合う等、学習する組織へ風土が変わってきた。最近の例では、月に一番大きな受注をした営業がその受注品目を題材として積算資料を基に見積もりの講師を担当して社内勉強会を行っていることだ。
この狙いは、特に若い営業が先輩の受注した同じ仕様の見積もりを単にコピーして前回通りと理解するのではなく、積算資料を参考に独自の考えをもってゼロから見積もりすることにより印刷工程や技術的な用語を復習してもらうところにある。ひとつの勉強会でも単純にテーマを挙げて開催するのではなく、「明確な意義をもたせること」が社長の方針だ。そうした社風があるからこそ社員が自覚をもって勉強でき、新しいアイデアを創る要素ともなっている。
このように営業が顧客に新しいアイデアを提案し、社内での勉強会で積極的にやるには印刷ビジネスに関連した基礎知識を身に付けていないといけない。JAGATが毎年開催している「印刷営業20日間集中ゼミ」は若手営業が印刷ビジネスに欠かせない基礎知識を学べる構成になっている。若手営業の早期戦力化を検討している会社には推薦したい講座である。
(CS部 伊藤禎昭)
「印刷営業20日間集中ゼミ」
期間:2020年5月11日(月)~6月5日(金)9:30~17:30
場所:JAGAT研修室 その他