【マスター郡司のキーワード解説2020】レンダリングインテント

掲載日:2020年5月28日

今回は「レンダリングインテント」について考える。

JAGAT 専務理事 郡司 秀明

レンダリングインテント

ICC(International Color Consortium)では、レンダリングインテントと呼ばれるカラーマッピング方法が複数定義されている。アドビソフトでは、プロファイルを使用して印刷するとき、印刷する画像に最も適したレンダリングインテントを次の4種類から選択できる。

「知覚的」は、カラー値が変更された場合でも、人の目に色が自然に映るように色間の視覚的な関係を保護する。知覚的は、色域外の色が多く含まれる写真画像に最適だ。日本の印刷業界における標準のレンダリングインテントである。

「相対的な色域を維持」は、変換元のカラースペースの最大ハイライトと、変換先のカラースペースの最大ハイライトを比較し、その差だけシフトして全ての色を変換する。色域から外れるカラーは、出力先のカラースペースで再現できる最も近い色に調整される。「相対的な色域を維持」を使用すると、画像のオリジナルの色を多く保持でき、北アメリカおよびヨーロッパ地域の印刷業界における標準となっている。

「彩度」は、彩度の高い色を優先的に保持する。色間の正確な関係よりも、明るい色使いが求められるグラフや図表など、仕事で使用するグラフィックに最適だ。

「絶対的な色域を維持」は、出力先の色域に収まるカラーは変更されないが、色域から外れるカラーはクリップされる。

では、どのレンダリングインテントを使えばよいのだろうか?今一部で話題になっている(らしい)。もともと(デジカメ登場前)、大きなRGB色域から小さなCMYK色域への変換はカラースキャナーが受け持っており、色域の大きさ(RGB>CMYK)はカラースキャナーで圧縮していたのである。基本的に色変換というのは、それほど大きさが変わらない色域への移動が主だったのである。だから基本は「相対的な色域を維持」、もしくは「絶対的な色域を維持」を使って校正刷り用に変換していた。日本でICCプロファイルを使用したカラマネが広まる頃、要するにJapan Color 2001 Coatedプロファイルをアドビが製作して、実装する時にまさしくデジカメの台頭がものすごかったのだ。大きいデジカメの色域をCMYK色域に圧縮しても、調子再現は大事なので階調再現を最優先して、日本では知覚的が標準で選ばれたのだ(私の知っている限り熟々考の末)。

最初は知覚的で問題なく十年以上使っていたのだが、最近になっていろいろやってみる人が出てきて、「知覚的or相対的」の議論になっているということだろう。私のように製版出身で、「階調再現に最大の力点を置いている」人間と、「色が合っていないとイケない」と思う人等々と千差万別である。私は調子がなくなってはどうしようもないと思っているのだが(色ならレタッチで何とかなるが、調子がなくなったらお手上げ)、その辺にはさまざまな意見があると思う。

次に変換した結果写真を掲載するが、TGツールを使用しているのでACE(Adobe Color Engine)ではなく、ColorSyncを使用しており黒点補正も使用していないが、サチっていないので影響は少ないはずだ。白黒なので分版表示で見ていただくが、反対色(緑の場合はMagenta)の入り方の差を見ていただくとよく分かると思う。

図1 TGツールでAdobe RGBからJapan Color 2011 Coated(CMYK)に、レンダリングインテントの「知覚的」と「相対的な色域を維持」で変換して、比較する。

図2  知覚的で変換した分版図だが、反対色のMagenta版に大きな差があるのが分かると思う。

図3 相対的で変換した分版図だが、反対色のMagenta版の調子がほとんどなくて平坦なのがわかると思う。

(JAGAT専務理事 郡司 秀明)
(会報誌『JAGAT info』 2020年3月号より抜粋)