印刷会社が明るい未来を創り出すためにやるべきことは何か。そのヒントとなるキーワードは何だろうか。
印刷業もマスカスタマイジングの時代へ
2012年のJAGAT大会で、塚田司郎JAGAT会長が『Disrupting The Future』(邦訳『未来を破壊する』)を紹介して以来、JAGATではこれからの印刷業のあり方について、『未来を破壊する』を基にさまざまな議論や提言を行ってきた。2014年のJAGAT大会では、『未来を破壊する』の著者の一人であるジョー・ウェブ博士が講演を行った。
JAGATは、この4月にジョー・ウェブ博士とリチャード・ロマノ氏の新作となる『THIS POINT FORWARD』を『未来を創る–THIS POINT FORWARD–』というタイトルで邦訳、出版する。
それに先立って、page2015基調講演「未来を創造する—Post未来を破壊する—」では、塚田司郎会長、日本フォーム印刷工業連合会の山口実氏、ハイデルベルグ・ジャパンの水野秀也氏、ブライター・レイターの山下潤一郎氏が、印刷業界の悲観的な未来を破壊した後に、明るい未来を迎えるために、より具体的な行動として、どのようなことに取り組むべきかを議論した。
『JAGAT info』3月号ではその講演の模様を紹介している。
ハイデルベルグ・ジャパン水野秀也氏は、『未来を破壊する』の内容をおさらいしつつ、印刷でもマスカスタマイジングがカギになると述べ、『THIS POINT FORWARD』の内容もそれを予感させるものであるとし、マスカスタマイジングに次のように言及した。
従来は顧客にサービスを提供する上で、印刷会社はマスプロダクションがベースであった。大量に生産し、配布するのが印刷業の基本だったが、小ロット化、多品種小ロットのニーズが出てきて、それにチャレンジし続けてきた。そのためにはマスプロダクションの概念を壊さなくてはならない。これからは、1枚作ることのできる技術から積み上げて、それを100枚、200枚、500枚、1000枚、1万枚、10万枚を作るという概念に変えるのであり、それをマスカスタマイジングと呼ぶ。すべてはカスタマイジングからスタートし、ビジネスモデルを構築して、利益のある収益性の高い仕組みを作り上げることが重要になる。
さらに、事例にもとに、印刷におけるマスカスタマイジングとは何かを解説しながら、マスカスタマイジングは印刷業だけではなく、ドイツで起こっているインダストリー4.0の基礎的概念になっているとし、世の中にあるすべての製造物はマスカスタマイジングによって生み出されるということに、印刷業もついていかなくてはいけないと述べた。
『未来を創る–THIS POINT FORWARD–』の翻訳を担当する山下潤一郎氏は、『未来を破壊する』の翻訳者でもある。まず、『未来を破壊する』で重要なポイントとして、印刷物出荷額の減少は景気後退ではなく、メディア革命を怠ったことなのであり、このメディア革命を無視するべきでない。印刷メディアについての新しい理解が必要なのは、状況が変わっているからである。だから、印刷会社も印刷ビジネスの新しいミッションを早急に作らなければならないと指摘した。その後に、『未来を創る』でのキーワードや考え方を紹介した。
このほか3月号では、page2015の展示会の模様をバリューマシーンインターナショナルの宮本泰夫氏にレポートいただいた。また、経営者インタビューは三松堂ホールディングの矢部真太郎氏に、ホールディングス経営体制と今後の展望などについてお話をうかがった。
(JAGAT info編集担当 小野寺仁志)
2015年3月号目次はこちら