今回は「レンダリングインテント RGBフロー」について考える。
JAGAT 専務理事 郡司 秀明
レンダリングインテント RGBフロー
印刷物用にCMYK変換するための「レンダリングインテントについては知覚的で決まり」と思っていたら、このところ「相対的が良い」という意見を耳にして、私も再度考えてみたのだが、誤解を恐れずに言い切っておく。
Photoshopで色変換する場合は、アドビの伝家の宝刀ともいうべき、黒点補正が大いに関係する。黒点補正をONにすると、結論として「相対的」と「知覚的」の差がほとんどなく、絵柄によっては相対的の方が調子的にも好ましく見えるという状況も生まれてくる(印刷人の目には6:4もしくは7:3で知覚的という感じだ。相対的支持者が良いと言っている絵柄も、私にとっては逆に見える)。要するに、Photoshopで黒点補正ONにすると「相対的」と「知覚的」があまり変わらないということなのだ。
そして、印刷会社中心のRGBフローというと、本来はというか、私が薦めているのはPDF/X-4によるフローだが、実際の印刷会社の現場で行われているのは、RGBからCMYKに変換して、そのCMYKに対して納得いくまでレタッチを施して高品質の印刷物を作り上げる。そして、レタッチ後のCMYKからRGBに戻してウェブ等に使用しているのだ。
「彩度」は、彩度の高い色を優先的に保持する。色間の正確な関係よりも、明るい色使いが求められるグラフや図表など、仕事で使用するグラフィックに最適だ。
Adobe RGBという大きな色域からJapan Color 2011という小さなCMYKの色域に変換するのは理にかなっているが、CMYKという小さな色域からsRGBというCMYKより大きな(一部小さな領域もあるが)色域に変換し直してウェブやその他のRGBメディアに使用するのは、かなりおかしい。しかし、色調に関して最高品質を演出するのは印刷メディアだけなので、こんな変なフローが成り立つのだ。変換する時のレンダリングインテントだが、Adobe RGBからJapan Color 2011へ変換する際には「知覚的」が使用される。レタッチ前提だからこれはこれでよいのだろう。そして修正して納得した絵柄をRGBに戻すのだが、このRGBは現在のところsRGBということになるが(もうすでにディスプレイや動画の色域はものすごく大きいものが標準だ)、この時のレンダリングインテントがAdobe RGBまで大きくないし、圧縮の逆なので「相対的」が使われている。日本発なのだが、これはISOにも提案されている。つまり、日本の印刷はレタッチを前提としているので、「知覚的」を使用している。
では、どのレンダリングインテントを使えばよいのだろうか?今一部で話題になっている(らしい)。もともと(デジカメ登場前)、大きなRGB色域から小さなCMYK色域への変換はカラースキャナーが受け持っており、色域の大きさ(RGB>CMYK)はカラースキャナーで圧縮していたのである。基本的に色変換というのは、それほど大きさが変わらない色域への移動が主だったのである。だから基本は「相対的な色域を維持」、もしくは「絶対的な色域を維持」を使って校正刷り用に変換していた。日本でICCプロファイルを使用したカラマネが広まる頃、要するにJapan Color 2001 Coatedプロファイルをアドビが製作して、実装する時にまさしくデジカメの台頭がものすごかったのだ。大きいデジカメの色域をCMYK色域に圧縮しても、調子再現は大事なので階調再現を最優先して、日本では知覚的が標準で選ばれたのだ(私の知っている限り熟々考の末)。
私が言いたいのは、このレンダリングインテントでバッチリというものではない。「知覚的」も、もう少しメリハリ(明るさが大事)がついた方が良いし、黒点補正がONだと相対的だって本来の相対的とはイメージが異なってくる。上記のようなRGBワークフローだとこのままでも良いとも言えるが、もう少し実践的な知覚的が可能だとも思える。要するに明度が下がるのが問題で、知覚的で明度を若干上げる工夫をするとPDF/X-4フローでも使えるのではないかと思う。では現在どう使用するかだが、目くじら立てるほどの差はない。日本ではレタッチ前提なので「知覚的」を使用すれば良い。
この辺を追求したくてTGツール(JAGATのホームページ参照)もバージョンアップして色域がどのように圧縮されているかが、ビジュアルで分かるようになっている。もし興味があれば試していただきたい。