新型コロナウイルス感染の影響による経済的な打撃は大きく、JAGAT会員企業のアンケートを見ても、印刷会社の受注はかなり厳しい状況になっていることが分かる。
JAGAT会員を対象とした印刷経営力調査によると、2019年度の回答企業の経営状況は、営業利益率が調査開始以降初めて1%を割り、経常利益率も1.6%と調査史上最低水準に低下した。このような状況のなかでのコロナ禍であり、印刷会社の経営は非常に厳しい状況を迎えているといえる。
もともと販促関連の印刷物などについては、インターネット、SNS時代になって消費行動が変化しているなかで、どのように活用するかが問われていた。そこにコロナ禍があって、本当に印刷物は効果があるのかと、印刷物活用の必然性が問われることになる。そこに対応していくには、しっかりとトレンドを把握して、クライアントに最適なソリューションを提案してく必要があり、それができないと受注に結び付くことは厳しくなっている。
従ってコロナ禍を契機として、自分たちがこれまで実践してきた営業の方法やあり方が、これからも通用するのか、その方向性は正しいのかを、印刷ビジネスモデルのあり方を含めて考えてみる必要があるだろう。例えば、販促ソリューションならば、印刷物はどのような場面で、どのような印刷物なら効果を発揮するのかを、クライアントに明確に提示できなければならないだろう。
となれば、販促ソリューションは印刷物だけを作れば完結するということはほぼ考えられないので、デジタルメディアをはじめとしたさまざまなメディアを組わせていくことが必要である。マーケティングやデータ活用は必須になり、afterコロナ/withコロナ時代には、印刷メディアと他メディアはバーサス(.vs)ではなく、withで活用するのが当たり前になる。そこで生きるのが、JAGATの提唱してきた「デジタル×紙×マーケティング」なのである。
「デジタル×紙×マーケティング」を体現するには、それを実践するための人材が不可欠であり、人材育成がこれからの印刷ビジネスをしていく上で大きなカギになるといえる。こういった人材は印刷物を受注、制作することを主とする場合と比較して、求められる知識は幅広く、その能力も高い水準が必要にある。それを体現する人材の一つの指針となるのが、JAGATクロスメディアエキスパート資格である。
会員誌『JAGAT info 』では、この資格試験を受験するときにも役立つものとして、JAGATエキスパート資格講座インストラクターの影山史枝氏による課題解決入門を連載している、8月号では、近年の購買行動プロセス「ULSSAS・PIXループ」について解説している。連載は最新のトレンドなどをしっかり押さえ、クロスメディアエキスパート試験だけではなく、実際のビジネスでも活用できる記事になっている。
コロナ禍の収束が見通せいない状況で厳しい経営環境が続くだろうが、収束した暁には、新しいビジネスモデルを開発できた、強い会社に生まれ変われたなど、災い転じて福となせるような取り組みを期待したい。(JAGAT info編集部)
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