一過性で終わらせないテレワーク対応

掲載日:2020年9月14日

印刷会社のテレワークは社員の感染リスクを抑えるためにやむを得ず始めた企業が多いと思われるが、アフターコロナを見据えた新しい仕事のやり方を考えたい。

まず見直したいのは作業指示書など紙の伝票を起点とした業務スタイルである。MISを導入し、システムで業務処理をしていても紙の伝票を確認し、捺印し次の工程にまわすというアナログの業務フローが残っている会社が多い。紙の伝票のほうが入力のミスやモレを発見しやすいことや色見本や前回サンプルなど伝票と一緒に“モノ”が動くことが多いという理由はあるが、テレワークの範囲を拡大させるためにもペーパーレスに取り組みたい。

営業所と工場が離れていて社内便で定期的に伝票を運んでいるケースでは、伝票レス(電子伝票化)が短納期対応にもつながる。これを実現するためには、情報が発生した時点での正確なデータ入力(誤りのない作業指示書の作成)が求められる。知識と経験が必要となるので新人には難しいし、ベテランになったらなったで個人の癖が強くでてわかりづらかったりする。営業に入力させるのをあきらめて工務が代わりにシステム入力している会社もあるくらいだ。しかし、正確で漏れがなく誰がみてもわかりやすい作業指示書の作成は生産性に大きく影響するので地道に取り組みたい。

「見える化」を進め高度なMIS活用を行っているある会社では、工務担当が在宅でリモートワークをしているという。自宅からインターネットVPNで会社のサーバに接続し、MISを立ち上げて業務を行っている。業務内容は印刷機と製本後加工の予定組、用紙と外注の手配である。作業の進捗状況は、MISに100%入力されているので現場に確認する必要はないし、外注や用紙の発注書はMISからPDFが作成されるので、それをメール添付で取引先に送っている。また、緊急事態宣言を受けてスケジュールの先行管理をさらに徹底し、二週間先までの生産計画を立て、一週間前には原則変更不可としてスケジュールを確定させている。そして、その生産に必要な社員だけが出社している。

お客様には「希望される納期で納品するためには、このスケジュールで進行してください」という条件を事前に提示し、もしその進行が守れない場合は納期がいつになるかを事前に提示している。印刷業界の商慣習からすると、こんな申し出をして他社に仕事が流れないか心配になるが、納得を得られないお客様はまずないという。「見える化」を進めることは危機対応力を高めることでもあると気づかされた事例でもある。
いずれにしてもベースとなるのは、入力すべき情報を入力すべき人が入力すべきタイミングで正確に入れるというMISの基本運用の徹底である。

(研究調査部 花房 賢)