JAGATでは今夏、印刷会社の新卒採用及び新入社員教育に関する実態調査を行った。コロナ禍で大きく変化する採用市場を印刷会社がどう捉えているのか、回答結果の一部を報告する。
新卒採用に関する企業調査(ディスコ2020 年 7 月調査)によると、2020年卒の採用の市況感に関して、売り手市場であると回答した企業は95%を超えていたが、一転して2021年卒に関しては40%に留まる。新型コロナウイルスの影響もあり大企業を中心に採用抑制が生じ、近年続いていた就活生の売り手市場に陰りが見え始めている。
【調査概要】
調査名: | 印刷会社の新卒採用と新入社員教育に関する実態調査2020 |
調査期間: | 2020年7月15日~8月20日 |
調査対象: | 2019~21年に採用実績又は予定する全国の印刷会社の経営者、人事・採用担当 |
回答社数: | 81社 |
調査方法: | FAX |
■2021年採用数48.4%減、採用抑制が顕著
印刷会社の新卒採用も同様で、2021卒(4月入社)の採用予定人数は、前年度と比較して48.4%減と大きく採用を抑制する方向である。特に、工場オペレーター職の採用抑制は顕著に表れている。2019~2020年は全体採用における構成比は4割程度であったが、2021年は28.3%と2019年と比べると12.6ポイントも低下している。また、印刷会社が強化する工程としてデザインが上位(JAGAT印刷経営力調査2020調べ)にあげられているが、デザイン・制作職も2021年は19.5%と2020年と比べて7ポイント低下している。コロナによる受注減が影響し、収支バランスを適正化するための生産体制の効率化、新たな人件費等の固定費を抑制する動きがある。
■営業職の採用を重視する傾向
採用数ベースで見れば、営業職もその他の職種同様に減少はしているが、2021年の構成比は37.2%と2020年と比べると12.3ポイント上昇している。コロナによる売上減少を回復するためには、短期的な戦略として新規顧客の開拓、既存顧客からの増注が不可欠であり営業力の強化が求めらる。また、即戦力ではない新卒の営業職の採用を強化する点にポイントがある。これからの印刷ビジネスには、従来のルートセールスのような営業職の姿ではなく、企画、マーケティング、ビジネス創出ができる広義の意味での営業が求められる。従来の価値観に染まっていない新卒を0から育成することで中期的な視点で、新たな営業体制を目指そうとしている印刷企業の心の内が見えてくる。
コロナの影響から、大企業を筆頭に人材採用の抑制傾向は強まるだろう。一方で、売り手市場が弱まることを意味し、中小企業にとっては優秀な人材を採用できるチャンスとも言える。限られた経営資源のなかで、自社に合う人材を見極め採用することが、今後の企業の成長を左右するのではないだろうか。
JAGAT 塚本直樹
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