【マスター郡司のキーワード解説2020】AGV

掲載日:2020年11月5日

今回は「AGV」について考える。

JAGAT 専務理事 郡司 秀明

AGV

AGV(Automatic Guided Vehicle、無人搬送車とか無人搬送ロボットと訳される)という合理化設備を取り上げる。

コロナ禍でリモートワークが叫ばれるなか、生産現場でもテレワークを意識してなのかどうかは分からないが、工場での人員不足もあり、改めてAGVの導入が物流現場・生産現場で真剣に検討されているようである。

印刷現場では、印刷版や紙を運ぶことが多いのだが、普通はフォークリフトやハンドリフト(パレットとも呼ばれる。写真1)を使って、人のスキルに頼って自在に紙の移動や積み卸しを行っている。しかし、人員不足になったら致し方ない。工場内で物を運ぶ場合などは、AGVの威力が発揮されるというわけだ。

AGV(無人搬送車)は90年代から導入されているのだが、2020年には防水型、AI搭載型等々と近未来型ロボットレベルにまで進化している。鉄腕アトムとまではいかないが、人との協働を想定して設計されているのだ。AGVについて、メリットやポイントなどをご紹介する。

AGVには複数の誘導方式があり、床に埋め込まれた電線からの微弱な誘導電流や磁気、描かれた線やQRコードを読み取り移動する機種がある。それぞれの誘導方式には一長一短があり、用途に応じて適用される。また、衝突防止のために近接センサーや超音波距離計等のセンサーによる安全装置も備えている。

写真2は磁気タイプのAGVで、かなりのスピードで走っている。写真3はQRコードを読み取るタイプで、中国広州の「海康機器人(HIKROBOT)」製である。写真2、3のAGVは、ホリゾン(製本機器メーカー)の琵琶湖工場で使用されているのだが、ホリゾンのような典型的な多品種生産では効力を発揮するのだろう。現在、標準品選定のまっただ中であった。ホリゾン的にはスマートファクトリーの実践である。

無人搬送ロボット導入は生産工場で威力を発揮するが、特に物流業界での効果が顕著で、Amazonも多くのAGVを導入している。ストック場所から梱包場所までAGVが必要アイテムだけをピックアップして運んでくれるのだ。無人搬送ロボットの導入が進む最大の理由は、産業用ロボットの中でもAGVの費用対効果が高いためだ。パソコンが普及した頃、フリーアクセスフロアが流行った。

しかし、フリーアクセスといっても自由自在にレイアウトを変更しているところがどれだけあっただろう? 見栄えは悪いが、キャットウォーク(天井に配線する猫が走るハシゴみたいなもの)の方がよっぽど便利なのだ。物流現場でもベルトコンベアが導入されたが、Amazonのような大企業の基幹設備は固定設備を作っても役に立つが、流行モノや特殊状況ではフレキシブルに対応する必要がある。AGVの方が自由度は高く効率が良いのだ。そんな感じで注目されているAGVの開発に各国が競っているのだが、やはり中国が群を抜いて目立っているようである。

AGVも初期は、磁気テープなどを引いた決められたルートで動くことしかできなかったのだ。しかしビックデータやAIの技術が発展したことにより、今では不定型なルートを自律走行で作業者の目の前まで運んでくれる。そのため重いパーツを組み合わせるアッセンブル工場や物流倉庫では大活躍している。

●AGV導入のメリットは、この3つが考えられる。

1.作業者の負担削減
2.商品間違いなどのミスの削減
3.コストの削減

●デメリットは、やはりその「導入コスト」ではないだろうか?
単に運ぶだけの機能でも何百万円もするが、Amazonが高コストでも導入できたのは、大企業であり、莫大な資本があるから実現できたのかもしれない。

●AGVを導入し、うまく運用するためのポイントは
1.現場設計
(フレキシブルに最適化した設計)
2.何をどこまでやらせるか(何でもやらせるのではなく、割り切りが大事!)
この2点ではないだろうか?
AIの発達により、AGVの可能性はまだまだある。コストの問題は避けて通れないが、AGVが役に立つのは間違いない。

(JAGAT専務理事 郡司 秀明)

写真1 ハンドリフト
写真2 磁気感応型
写真3 QRコード読み取りタイプ