都道府県、市区町村でも中小企業向けの展示会(オンライン含む)出展の助成金制度も整備し、販路拡大に向けた展示会への出展を後押しとしている。コロナ禍における展示会のあり方やリアル、オンライン展の特長と使い分けについて考えてみる。
展示会は、企業が新たな販路の開拓や既存顧客とのコミュニケーション再強化を図れる。顧客(来場者)は、今欲しい情報や新たな取引先の選定において、サービス提供企業が一堂に会した展示会の場があれば、情報収集の効率化も図れる。企業と顧客の縁を紡ぐうえで、展示会は大きな役割を果たしてきた。しかし、コロナ禍においてビジネスのあり方や社会的価値観が大きく変わり、展示会のあり方も変わる必要がある。
■展示会はリアル+オンラインのハイブリッドへ
コロナ前までは、リアル展示会のみの開催が主流であった。しかし、コロナ禍においては、開催形式が「リアル」「オンライン」「リアル+オンライン(ハイブリッド型)」の3つに大別している。特に、2020年上期は政府からの自粛要請により、リアルでの開催は実質不可能な経緯もあり、オンラインのイベントへ大きく舵を切られていた。しかし、リアルな活動なくしては、経済の破綻を招く恐れもあるとして、Go toキャンペーンを代表に、リアル需要の喚起が政府主導で行われている。ビジネスにおいてもデジタル一択からリアルの重要性も改めて見直され、リアルとデジタルのどちらか一方ではなく、双方のメリットを生かしたイベントのあり方が求められている。
■リアルの強みはブランド体験
〔リアル展示会メリット〕
・実機が触れる、ブランド体験ができる
・対面でのコミュニケーションが図れる
・名刺やアンケートの交換でリードを獲得できる
〔オンライン展示会メリット〕
・時間と場所を選ばず参加できる
・来場属性を分析できる
・多くの方に認知を広げることができる
リアル展示会のメリットはブランド体験や直接的なコミュニケーションが図りやすいことがあげられる。出展者の目線では、印刷機を見てもらえたり、出力した印刷物を実際に触ってみたりとリアルな体験を促すことができる。また、来場者からの質問に対してはその場で回答ができたりと即時性も高い。結果として、来場者が「能動的」に出展企業と名刺交換をするケースも多く、確度の高いリードを獲得することができる。
■オンラインの回遊性が重要
一方、オンライン展示会は、リアル展示会と比べるとサービスの体験値は低くなる。VRを駆使してバーチャル体験を高めたとしても、その多くは正直リアルには敵わないのが本音ではないだろうか。オンライン展示会の良さは、いつでもどこでも好きなときにアクセスできることであり、リアル展に比べると全国の顧客(見込み客)へ広く多くの方に情報を届けることができる。また、オンライン展は来場者の属性データの取得が容易であり、マーケティング分析に利用できる。その情報を営業リストとしての活用するのであれば、個人情報保護の観点から、来場者が自主的に出展者へ情報を開示するプロセスが必要になる。そこで、出展者は自社のオンラインブースに「製品紹介動画」「製品紹介PDFデータ資料」等を設置して、閲覧、ダウンロードする条件として個人情報の登録を求めるケースが多い。ただし、この点についてはオンラインの良さを消してしまうため留意する必要がある。オンライン展は、来場者が物理的移動を伴わないため、目的の出展者やテーマへすぐに回遊できるのが利点である。しかし、各オンラインブースに訪れて資料を見るたびに、個人情報の登録を求められては回遊性が悪くなり来場者の離脱につながる。つまり各社がリードの取得を目的に多くのコンテンツに閲覧条件を設けては、オンライン展全体のユーザビリティの悪化を招いてしまう。デジタル展だからこそ欲しい情報がストレスなく取得できるある程度自由な回遊性を保つブース設計が好まれる。
以上の点を考慮すると、良質なリードと成約を高めることを目的としたリアル展。製品・サービスの認知度を広めることを目的としたオンライン展。各々の特長を生かした棲み分けを考えながら、展示会の出展効果を高める一考になればと思う。
JAGAT 塚本直樹
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