印刷物の生産にどれだけのモノ、サービスが投入されているか。印刷物はどの産業にどのくらい購入されているか。「接続産業連関表」と「延長産業連関表 」で見てみよう。 (数字で読み解く印刷産業2020その10)
5年に1回公表の「産業連関表」
「産業連関表」は国内で1年間に行われたすべての産業の取引を一つの表にまとめたもので、各産業間のモノやサービスの取引状況を金額で把握できます。多種多様な統計資料を用いて、10府省庁が共同で5年ごとに作成する加工統計なので、精度に優れ各種資料のベンチマークとなっています。ただし、公表時期は遅くなり、日本全国を対象とした全国産業連関表(基本表)は、「平成27年(2015年)産業連関表」(2019年6月公表)が最新のものです。
経済産業省は、毎年この基本表から各年の産業連関表を延長推計した延長産業連関表を作成しています。『印刷白書2020』では、2020年3月に公表された「平成28年(2016年)延長産業連関表(平成27年基準)」を中心に、印刷産業とその取引先産業やクライアント産業の動きを見ています。
接続産業連関表で2005年からの推移を見る
『印刷白書2020』では、延長産業連関表(96部門表)の「印刷・製版・製本」の行列を金額の大きい順に並び替えて、取引額の大きい産業をグラフにしています。今回は総務省が8月31日に公表した 『平成17-23-27年接続産業連関表』 を使って、2005年と2011年を追加してみました。
96部門表の「013印刷・製版・製本」を列方向(タテ)に見ると、印刷産業がどの産業から1年間にどれだけの金額の生産物やサービスを購入しているか、行方向(ヨコ)に見ると、印刷産業の商品・サービスの販売先がわかります。2016年の上位10部門に関して、2005年以降の推移を見てみましょう。
「原材料等の調達先上位10産業」を実質表で見ると、材料費、商業(卸売マージン額など)、同業者間取引が上位を占めています。印刷市場の縮小を反映して2011年から2015年に大きく減少し、2016年も減少傾向にありますが、化学最終製品(印刷インキなど)だけは前年より増加しています。
「販売先上位10産業」から印刷産業の得意先を見ると、長年首位の映像・音声・文字情報制作(出版、新聞など)が、2005年から2011年に大幅に減少し、構成比は2005年の14.5%から2016年には11.7%まで低下し、金融・保険11.0%、商業10.7%と同じ規模になっています。医療・福祉と食料品・たばこは堅調に推移しています。
『印刷白書2020』では、産業連関表を使って、印刷産業の取引の流れを細かく見ています。限られた誌面で伝えきれないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。
(JAGAT CS部 吉村マチ子)