9月の売上高は△23.7%。マイナス幅は8月(△16.3%)に比べて7.4ポイントの大幅悪化だった。コロナ禍の影響で5月に底打ちして以降の回復基調が腰折れた形だ。
しかし昨年9月は、消費増税前の駆け込み需要に平日日数1日増しといった2つの特殊要因で売上高が+20.4%と異例の高さだった。これを割り引いて勘案した9月の実質は△10%前後であろう。5月を底とした回復基調の歩みは9月時点では止まっていないと見てよい。
業種・業態別では、商業印刷は昨年の反動減を差し引いても落ち込み幅が大きい。コロナ禍の影響が深く、そして長引いている。出版印刷はいち早く7月に△10%前後まで戻し、その後は横ばいになっている。総合印刷は昨年の特需を差し引けば9月は実質的にプラス圏といえるかもしれない。紙器・事務印刷は実質的に△15%前後で推移しているようだ。
規模別では、50~99人(△29.7%)の苦戦が著しく、この規模を底として規模が小さくなるに従って、あるいは規模が大きくなるに従って、回復が早くなる構図だ。受注件数(△19.2%)は、8月よりは落ちたが、実質的に緩やかな回復傾向は途切れていない。材料仕入額は、用紙が△4.6%とコロナ禍以降の最高。インキも△7.7%と徐々に戻し、印刷の実需が次第に増えていることが示唆される。ただしCTP/PS版は△24.0%とまだ低調なので、相対的にはデジタル印刷の方が良いのかもしれない。
【印刷会社経営者の声】
■東京:出版
デジタルデータ事業を清算したので、昨対比は大幅悪化だが、本業の印刷は約7割とまあまあな状況。出版全体としての売り上げ減少は底が見えてきた印象があるものの、今後の社会情勢に注視したい。
■ 岐阜:その他
精進を続けることは難しいが、続けることで力になる。良いことはなかなか続かないが、良くないことは容易に続くものだ。「良くないことへの対応」が精進と言えるなら、きっといつか力になると信じたい。
■ 京都:商業
社内で大規模な研修を実施しました。刺激を受けた社員が多くいたように思います。社員一丸となって学んだことを生かしていきます。
■ 大阪:商業
昨年9月は消費増税前の駆け込み需要で大幅な売り上げ増だったが、今年はその反動で下がった。コロナ禍で減った仕事もあるが、新しい商材も出てきたので、今後の売り上げは昨年を上回ると予想している。
■ 山口:事務
昨年は消費税増税前の駆け込み特需で、9月度としては当社史上最高の売上高でした。“山高ければ谷深し”。今年は特需なしとコロナ禍で8割を切る大幅減の状況です。Go Toキャンペーンの恩恵でどうにか食いつないでいます。忘年会も絶望的なのでしょうか……。
(『JAGAT info』 2020年11月号,印刷経営ウォッチング,p56-57より抜粋して要約)