印刷予定表をExcelで作成している印刷会社は多い。その理由とシステム化の課題を考える。
長引くコロナ禍のもとでは売上減少への対応に目がいきがちであるが、時間的に余裕のあるときに社内を効率化する仕組み作りにも取り組みたい。
「整流化」という言葉がある。製造業の生産工程等において、モノや情報が淀みなく流れている状態にすることをいう。モノや情報が入り乱れたり、停滞したり逆戻りすると生産性の低下を招く。
印刷会社において「整流化」を担っているのは、工務や生産管理部門であろう。営業が作成した作業指示書の不備やモレをチェックし、印刷工程以降の予定表を作成する。作成した予定に基づき用紙や外注の手配をし、進捗状況を随時確認しながら予定の調整を行う。
非常に重要な役割であるが、属人性が高く業務のシステム化は遅れていることが多い。MISを導入している企業であっても印刷予定表の作成はExcelを使用しているケースが多くみられる。
印刷予定表をExcelで作成している理由として以下が考えられる
1.MISに細かい工程を登録するのが面倒
・書籍の本文など印刷台数が複数あるときは台ごとに分けて予定を登録する必要がある
・片面機で表裏を印刷するときは、表面と裏面それぞれの印刷予定を登録する必要がある
2.受注産業ならではのジレンマ
・お客様の都合で仕様がなかなか決まらない
・予定通りに進行が進まない。しかも遅れても納期は変わらない。
3.営業の課題
・MISに入力するタイミングが遅い。情報が歯抜けだったり不正確だったりする。
⇒仕様決定のタイミングが遅い。また頻繁に仕様変更があるので、すべて確定してから入力しようとする。
⇒受注環境が厳しいなか、お客様にものを言いづらい。わがままを受け入れざるを得ない(と思い込んでいる)。
・営業活動が忙しくて、煩雑なMISへの登録作業をやってられない
⇒小ロット化でジョブ数はさらに増加。さらなる負担増を招いている。
・知識不足で作業指示書をきちんと作成できない
・営業と製造のコミュニケーション不足
⇒確定情報や変更情報があっても聞かれないと答えない
情報がなかなか確定せず、しかも変更が多いという個別受注産業の特性をまとめて引き受けて調整しているのが工務や生産管理部門であり、その業務を行うのに柔軟で融通が利いて非常に使い勝手のいいツールがExcelだといえる。
しかし、Excelでは他部門との情報共有や他システムとの連携に難があり、「見える化」や「自動化」のボトルネックとなる可能性が高い。
この課題を乗り越えるべくメーカーからは生産管理に特化したシステムが提案されているが、前述したようにシステムだけでクリアできるものではなく、営業と製造のセクショナリズムやお客様との商慣習などさまざまな要素が絡み合う。
page2021オンラインカンファレンス「生産管理から始めるスマートファクトリー」セッションでは、目指すべき姿と現実のギャップ、そしてその乗り越え方についてユーザー視点で考える。
(研究調査部 花房 賢)