2020年度に入社した社員は、新型コロナウイルスの影響により、集合型の新入社員研修や上司・部下の密なコミュニケーションによるOJTの機会が減少せざるを得なかった。人事教育担当者にとって、新人教育に関し今もなお試行錯誤が続く中、2021年度の新入社員を迎える準備を整える時期となったが、この状況下における彼らの意識の変化をとらえ、対応を考えたい。
■ 新入社員の企業に対する意識の変化
ラーニングエージェンシーが2020年度に入社した新入社員3,128名を対象に「2020年度新入社員のキャリアに対する意識調査 (2020年4月2日~22日実施) 」を行った。その結果を以下のように分析している。
2016年度以降、新入社員の勤続意向は年々低下していたが、今年は一転し、5年ぶりに上昇した。新型コロナウイルス感染拡大による先行きへの不安が影響している可能性があり、不安の裏返しから「今の会社で働き続けたい」という割合が増えていると考えられる。また、新入社員を取り巻く「不安」は、勤続意向だけでなく、別の面にも現れ、「いざというとき」のために専門性を高めたい新入社員の割合が回答結果からみられた。さらには、「今後どのような仕事をしていきたいか」という問いには、「広範囲なスキル・知識が求められる仕事」が昨年の倍となっており、感染症拡大で経済活動が大きく制約される中、もしものときに備えて専門性を磨き、環境の変化に対応しておきたいと志向する新入社員が増えたといえるのではないだろうか。
■ 新入社員向け研修の目的
勤続意向が高く、専門性を高めるとともに広範囲なスキル・知識が必要な仕事をやりたい彼らに対しては、企業としても相応の“教育”という投資が求められるであろう。
新入社員研修を行う目的は、大きく4つの観点から考えられる。一つは、事業内容を知り、業界や事業への理解を深めることである。自社の強みに合わせた戦略や立ち位置を知ることで、実務もスムーズに進めることができ、深い理解によって新入社員のモチベーションが高まることも期待できる。次に、社会人の土台となるビジネスマナーや就業規則を学び、社会人として基礎を養うことである。学生時代から社会人としての意識の切り替え、今までの考え方や価値観をビジネス思考へと移行することで責任感が芽生え、仕事に取り組む姿勢が変わってくる。そして、業務に必要なスキルと知識を身につけることも必要とされる。これからやるべきことが具体的となり、ビジョンが明確化し、現場での早期戦力化が期待できる。最後に、研修を行うことにより、業務と学んだことが結びつくことで仕事に対する意欲が高まり、また、同期や他社の新入社員と一緒に学ぶことで互いに刺激を受け、離職防止へとつながる。
■ 専門知識と実践的学習
JAGATでは、印刷会社で働くための基礎知識と印刷工程をより具体的に理解できるよう体験型研修を毎年開催し、新入社員向け研修に力を入れている。中でも、印刷営業20日間集中ゼミは、体系的な知識習得とともにクライアントへのヒアリングから企画、仕様書、見積書の作成といった実務に役立つカリキュラムに加え、クライアントに対しプレゼンテーションまで行い、段階別に印刷営業のプロセスを体験する。学習した知識を実践に活かすことで応用力を高め、自ら考え、解決する力を身につけることができる。20日間集中的に学ぶことにより、受講者同士の絆が深まり、研修後も相談をし、刺激し合える良い関係性が築けるとともに、習得した内容をアウトプットすることで理解が深まり今後の仕事に対する自信となる。長期にわたる大型のセミナープログラムではあるが、前述のように今の会社で働き続け、専門性と広い知識を求めるという意識を持った新人の土台作りに適しており、効果的な教育投資としておすすめする次第である。
受講者が知識を習得し、仕事への意欲やモチベーションが高まることで、組織力が高まり、企業の業績が伸びることにつながっていく。企業がいかに人材育成の重要性に着手するかで大きく変わっていくだろう。企業の継続的な発展につながるよう社員教育に費やす時間を大切にしていただきたい。
JAGAT CS部 加治寛子
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